新型コロナウイルスなど足元の状況について
さて、前半では当ファンドの半期運用報告をしましたが、皆様もご存じの通り足元の投資環境はガラッと変わってしまいました。いつもの運用報告会では、初めに4つの国・地域別(日本、米国、欧州、新興国)ごとに景況感を確認し、いくつかの中長期的な投資テーマ、メガトレンドの話をして、投資先の企業がどのようにしてそのメガトレンドから恩恵を受けるのかといった、あくまでも中長期的な視点に立って話をさせていただいておりますが、新型コロナウイルスの影響で短期の相場があれていますので、今回は新型コロナウイルスの考え方を中心にお話させていただければと思います。なお、私はウイルス関連の専門家ではございませんので、あくまでも手に入るデータ、報道、アナリストレポート等の域を出る話ではない点はご了承ください。
まず、今回の問題の震源地武漢のある湖北省の感染者数動向を確認してみましょう。途中で感染者の定義を広げたため急増している日があり、ややノイズはありますが、基本的には、時間をかければ治る点は確認いただけると思います。毎日、『どこどこで誰が感染した~』、『咳したら電車止まった~』、『学校も閉鎖だ~』なんてニュースを聞いていると映画のバイオハザードみたいに世の中終わるような感覚に陥るかもしれませんが、ちゃんと治ります。
【新型コロナウイルスの新規感染者と完治者の推移(湖北省のみ)】
出所:中華人民共和国国家衛生健康委員会より、ありがとう投信作成。2020年3月11日時点で取得できるデータにて作成。
新型コロナウイルスの発生当初の武漢では医療体制が崩壊していた可能性が高く、感染者数と完治者数の分布が見にくいので、次に湖北省(武漢のある省)を除く中国本土の感染動向も見てみましょう。こちらの方がしっくりきますね。新規感染者のピークと完治者数のピークに大体16日くらいの時間差が見られますので、もし感染しても、適切な治療を受けられるのであれば、その程度の日数で完治できるということですね。私はず~っと昔、肺気胸をこじらせて2週間ほど入院したことがありますが、その際お見舞いに来てくれた友人が、病院食は味気がないからとくれたシャケフレークのことを今でも覚えております。もちろん入院しないことが一番ですが、最悪入院することになったらそういった日々の何気ない出来事に感謝する日々だと思えばいいのではないでしょうか。
【新型コロナウイルスの新規感染者と完治者の推移(湖北省除く中国本土)】
出所:中華人民共和国国家衛生健康委員会より、ありがとう投信作成。2020年3月11日時点で取得できるデータにて作成。
次に、世界的な感染の動向も見てみましょう。赤い点線が中国での患者数の推移を表しております。先ほどのデータでもそうでしたが、中国では一時期から感染者の定義を広げて患者数が急増した時期があり、少し歪なカーブになっていますが、中国から遅れて感染が拡大し始めた世界(青色線)においても同様のカーブに沿って感染が拡大しております。このグラフを見る限り中国を除く世界の感染状況はまだ始まったばかりと認識するのが無難でしょう。また、足元では中国の患者数の推移に頭打ち感がありますので、大体一ヶ月ちょっとで感染拡大を封じ込めることが可能なのかもしれません。しかし、中国では当局による市民的自由の制限とハイテクを駆使した封じ込め策を徹底しており、これから感染が進む他の国ではここまでの対応策を講じられるかは期待できないので、終息までの道のりは長くなるかもしれません。
【新型コロナウイルスの中国内外の患者数の推移】
出所:WHO、ファクトセットより、ありがとう投信作成。2020年3月11日時点で取得できるデータにて作成。
ということで、中国を除く世界的にはこれから本格的な感染が拡大していくフェーズだと思いますが、株式市場的にはいつ収束するかが目下関心どころになっております。
例えば、一般的にはウイルスは気温上昇に伴い増殖が難しくなると言われており、4月頃にでも収束の兆しが見えてくるのではという楽観シナリオもありますが、南半球でも感染している例が確認されており、過去に夏の期間に流行したインフルエンザがあったこともあり、あまり楽観視しない方がいいかもしれません。
また、治療薬・ワクチンによる短期収束期待シナリオもありますが、新型コロナウイルスのワクチンを新規で開発するとなると最低でも数年の期間が必要らしく、過度な楽観は禁物です。直近で注目されているのは既存の薬を流用するアプローチで、すでに臨床試験が開始されている候補の薬もあります。ただし、ワクチンにもいろんな種類があるらしく、インフルエンザワクチンなどと同じく、重症化予防のワクチンはできる可能性はあるが、感染予防ワクチンの開発には難があるようです。
こんな状況ですから、あと数週間で収束!株価もV字回復だ!という青写真は描きにくく、半値戻しくらいは行くと思いますが、いずれにせよ今は動向を見守ることしかできません。実際、今の株価も短期での解決を織り込んでいるようには見えません。つまるところ株式市場では新型コロナウイルス自体の脅威を問題視しているというよりは、それによる経済への影響が議論の中心になっております。
例えば、供給サイドでは感染拡大の防止のため製造ラインを止めたりしているのでグローバルのサプライチェーンに大きな影響を与えています。完成品を製造している企業では部品の在庫も一定程度あると思うので数週間は耐えられるかもしれませんが、あまり長引くと生産をストップすることになるでしょう。そうなるとそこで働いていた方々は一定の補助を受けられるにしろ100%働いていた頃より手取りの収入は減り、消費者マインドが冷えかねません。こうして需要サイドへ影響が波及すると、個人消費が経済の柱となっている先進国経済も下振れかねません。
出所:『未来投資会議資料』より、抜粋
【名目GDP構成の主要国・地域比較】
出所:ファクトセット、名目GDP構成2019年6月末時点、ありがとう投信作成
こういった景気下振れ懸念もあり、FRB(米連邦準備理事会)は3月3日に臨時のFOMC(米連邦公開市場委員会)を開き政策金利を0.5%引き下げました。利下げ自体は新型コロナウイルス解決に対してなんの効果もありませんが、企業経営、消費者マインド、株価バリュエーションといった観点からはポジティブな決定だと思います。しかし、金融市場はこれでも足りないと、さらなる利下げをコンセンサスとしております。今月のFOMC定例会合でもさらなる利下げが発表されることでしょう。そして足元市場はそれを既に織り込んでおります。トランプ大統領も自国の経済が下振れて、雇用が低迷するようなことがあっては、11月の大統領選に直結してきますので、FRBに対して相当圧力をかけています。
●金融緩和については過去のブログをご参照ください。
【FF金先の水準:一度下げた金利を上げるのは相当難しい・・・】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。データは2020年3月11日時点。
トランプ大統領が大統領選で再選するか否かはいずれまた議論するにしても、この新型コロナウイルスパニックにより過去10年近く行われてきた金融緩和の環境がガラッと変わりそうです。何とか金利が存在していた米国すらゼロ金利状況に陥るためです。一度下げた金利を上げるのはとても難しいことで、日本のバブル崩壊からのゼロ金利→マイナス金利の歴史を見れば明らかです。いずれ新型コロナウイルスは収束する時が来ますが、その時の世界はほぼ金利の無い世界になっているかもしれません。
●大統領選については過去のブログをご参照ください。
→『Make Trump President Again?』から長期投資を考えてみる
追い打ちをかけるように、足元ではサウジアラムコがOPECでのロシアとの協議決裂を経て、4月から原油生産量を大量に増産する方針を正式に発表しました。おかげで原油先物価格は大幅に下落することになりました。ただでさえ新型コロナウイルス影響で大変な時期に、空気読めない感MAXですが、今まで米国のシェールガスでとられてきたシェアの巻き返しなど思うところがあるのでしょう。
●原油関連については過去のブログをご参照ください。
→ありがとう39ランキング【世界は広いよ!:時価総額比 エネルギー資源セクター編】 前編
【原油供給シェア(2017年)】
【原油供給シェアの推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
そんなこんなで、足元新型コロナウイルスの話もそうですが、それから波及した問題、そうじゃなさそうだけどやらかしてる問題等いろいろあります。しかし、だからと言って過度に悲観的になるのもどうかと思います。長期投資されてきた受益者の皆様は過去10年、20年投資をしてきてハラハラドキドキしなかった日は無いと思います。別に投資をしていなくても悲しい出来事で落ち込んだ時もあると思います。重要なことはリスクは常にあると想定すべきということです。個人でできることはそのリスクをどれだけ許容できるか、そしてそのリスクに見合った資産形成のゴールを明確に定めることだと思います。リスクの取り方もいろいろあり、時間分散も一つの手段でしょう。と言っておきながら、私は創業記念日の3月9日に縁起を担いで393,939円スポット買いで買い増しましたが・・・お積み立ては計画的にですね。
●リスクをとりたくない方は過去のブログをご参照ください。
●パニックと人間の心理については過去のブログをご参照ください。
下に掲載した図はいつも運用報告会で見せているものなのでつまらないかもしれませんが、結局行きつくところは人口とそれに伴う経済活動の拡大だと考えており、ありがとうファンドの運用方針ではそういったファクターの成長の恩恵を受けられるであろう企業を厳選投資しております。たとえ、我々が暮らしている日本の人口動態、経済活動の見通しが悪くとも、手元にある円を国際分散・厳選投資することにより長期的な資産形成を目指すアプローチは至極合理的だと考えておりますので、その点お忘れ無いようよろしくお願い申し上げます。少し長くなったので、続きは次回以降にさせて下さい。
●日本の人口動態ついては過去のブログをご参照ください。(まだこのシリーズは終わってませんが・・・)
●ありがとうファンドは国際分散投資ファンドなんです。
出所:ファクトセット、IMFより、ありがとう投信作成。データは2001年を100として指数化
出所:ファクトセット、IMFより、ありがとう投信作成
出所:ありがとうブログ:エマージング小型株式ワールドへいらっしゃい♪
出所:ありがとうブログ:ありがとう39ランキング【テクノロジーサービスセクター:⑤中国のテクノロジー企業&その他】
39!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
◆記載内容について: 資料に記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
◆株価指数について:記載されている各国・地域市場の指数は特別注記が無い場合は以下の指数を使用しています。
【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
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