ありがとうの本棚(今月の一冊『世界の力関係がわかる本』)
世界の力関係がわかる本 ――帝国・大戦・核抑止
(ちくまプリマー新書 492) 新書 - 2025/5/9
千々和 泰明 (著)
ロシアによるウクライナへの侵略や、イスラエル軍によるガザ地区侵攻など...多くの人は「戦争は悲惨だ、なくなればいいと」と感じるでしょう。しかし、現実的にはそうもいかず、毎日、戦争のニュースが報じられています。「なぜ戦争は起こってしまうのか」「なぜ戦争はなくならないのか」ということに対し、著者が「世界の力関係」をポイントにもう一歩踏み込んで考えるための知識を提示した一冊です。
前半は、昔の「帝国」と今の「主権国家」の違いや、第一次・第二次世界大戦などの歴史について、世界の力関係がどのように動いてきたかが説明されていて、過去の戦争が現代の国際問題にまで影響していることがよくわかります。後半は、「集団安全保障」の仕組みや「核抑止」の概念が解説されており、現在の世界の力関係についてより深く理解できる内容になっています。
特に強く印象に残ったのは、「直観に反する理屈」(直観に反することが実は理屈としては正しい)が国際政治を難しく、複雑にしてしまうということです。例えば、A国・B国がそれぞれ軍備を持つか持たないかを選ぶことができるとします。両国にとって最善の選択はどちらも軍備を持たないことですが、相手国が軍備を持つかもしれないと考えてしまい、A国もB国も軍備を捨てることができなくなります。結局、どちらの国も本来望んでいないはずの「両国ともに軍備を持つ」という結果になってしまいます。このようなジレンマが、戦争の始まりや核抑止に大きく関わることが具体的に書かれています。
本書は中高生向けに平易な文章で書かれているので、一気に読了できます。世界の国々の力関係を読み解く国際政治学入門書として、大人が基礎を学ぶにはちょうどよい一冊です。
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