マスク価格高騰から思ったこと
平素大変になっております。さて今月のありがとうトピックスは少し趣向を変えて、私の身近に起こっている現象から話を広げてみたいと思います。4月の中頃、会社近くを歩いていたところお弁当屋さんがマスク(50枚入り)を売っている光景を目にしました。販売しているオッサンに価格を聞いてみると1枚当たり税込みで77円ということでした。仕入先についても聞いてみると、中国の工場から航空便で取り寄せたとのことでした。
ちょうどそのころ、中国企業を経営している知人から使い捨てマスクの仕様書が送られてきていたので、卸値を見てみると、お弁当屋さんの価格の半値近くでビックリしました。私の家では花粉症対策として常に大量のマスクが備蓄されていたので、マスク価格について全く関心がありませんでしたが、ここまで乖離のあるプライシングの現状を目のあたりにして、何かできないか考えてみました。
結果、知人の介護施設・老人ホーム等使い捨てマスクを職業上必要としている方々に中国の仕入先を紹介することにしました。私には1円も利益が入ってきませんので、その点は誤解しないで下さい。そんなこんなで、マスクトレーダーになりましたが、株式市場と同じで、人間関心が湧いてくると、色々調べるもので、それなりにマスク市場について詳しくなりました。今日は時事トピックということで、マスク市場についてみてみましょう。
下図で現在の市場価格をざっくり把握してみましょう。報道などにもあったように販売価格1枚当たり100円前後といったマスクは大分淘汰され、足元ではネット販売最安値圏で1枚当たり50円前後になっているようです。最安圏で販売している業者の仕入先のほとんどが中国企業なので、私の仕入先の卸値と比べてみると、4月の中旬頃は20円近く利ザヤをとれていたようですが、本格的に中国からのマスク供給が増えるにつれて、利ザヤが縮小しているように見受けられます。足元では10円程度の利ザヤに縮小していますね。私はマスクストラテジストではありませんが、最近近所のスーパーでも中国産の50枚入りマスクをよく目にするようになり、国内供給が大分増えてきているので、今後はこの利ザヤをどこまで削れるかが販売業者にとって死活問題になると思います。また加えて、ここ1週間ぐらいでほぼ卸値で販売する方も出てきたので、販売価格の下押し圧力はより強くなるでしょう。
【使い捨てマスクの1枚当たり単価の推移】
出所:各種資料より、ありがとう投信作成。シャープの1枚当たり価格は、すべて込みの価格3,938円を50で除して計算。ネット販売最安値は『マスク在庫価格ランキング』より、4月30日時点で、1,000枚以内、税込み、送料無料を参考に最安値単価を集計。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で値上がりした商品の中でもマスクは特に値上がりが顕著
出所:『未来投資会議資料』より、抜粋
簡単にですが、海外でのマスク1枚当たり販売価格も調べてみました。日本だけ法外に高いというわけではないようですね。新型コロナウイルス感染拡大の影響で世界的に使い捨てマスクに対する需要が急増しているため、マスク価格高騰は日本だけの現象ではないのでしょう。
【1枚当たりマスク価格の国際比較】
出所:日本以外の価格はAmazonの各国サイトで検索上位に出てきた50枚入り使い捨てマスクの販売価格を2020年4月30日時点の為替(ファクトセットより)で邦貨換算し、50で除して計算。送料の有無や各種税金等など比較するうえでファクターが一律ではないので、あくまでも参考値。
次は原価・卸値についてみてみましょう。と言っても、正確な卸値は私の知人の中国企業1社のみしか把握していないので、あくまでも参考までになります。しかし、マスクを必要としている知人と話をしていると、同業他社の卸値を聞く機会もあり、どこも大した変わらず、どんぐりの背比べといった状態のようです。当初のすべて込み卸値は1枚当たり39円で、途中から原材料高騰等の為1円upして40円になりました。あくまでも個人の感想ですが、税金だけで15%近く持ってかれるのはなんかムカつきました。2019年4月1日から中国は日本の一般特恵関税制度の対象国から外れたので、関税4.7%が掛かるそうです。因みに、アベノマスクの一部はベトナムからの輸入とニュースで報道されていましたが、ベトナムは依然特恵関税適用国なので、関税は掛からないようです。
世界中の需要増で原材料が高騰しているので、すぐに原価を下げられないのはしょうがないとして、原油価格は大分下がったので輸送の燃料費用は下がりそうなものですが、旅客輸送の需要がほとんど無くなったエアラインなどは貨物輸送に活路を見出そうとしているようで、残念ながら輸送費もすぐには下がらなさそうです。そもそも新型コロナウイルスとは長期戦を想定していますので、いくらか調整したとしても、流石にコロナ前の卸値・販売価格水準には当分戻らないとは思いますが・・・。
【当初卸値はすべて込みで39円】
(冗談で39言ってるわけではございません)
出所:中国企業資料より、ありがとう投信作成。ロットの大きさにより数円安くなるが、図では保守的に考え、最小ロットで一番高い卸値を記載。
原油価格は大幅に下落
【WTI原油先物価格】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。
さて、次はもう少し話を広げて、サプライチェーンについて見てみましょう。そもそも中国からの輸送費や関税やらをなぜ考えないといけないのでしょうか?それは、国内のマスク供給の約8割を輸入に頼っており、その主な輸入先が中国だからです。
【マスク生産数量の推移】
出所:一般社団法人日本衛生材料工業連合会より、ありがとう投信作成。
下記図で不織布マスク等繊維製品の輸出国シェアを見てみると、輸出では半分近くのシェアを中国が占めています。このデーターは繊維製品のシェアなので必ずしも使い捨てマスクだけの動向を測るのに適切とは言い切れませんが、全体感は把握できると思います。意外とドイツの輸出シェアが大きい点が面白いですね。上述したマスク価格の国際比較した際に、気づいたのですがドイツのマスクがかなり安めだったので、こういうところもリンクしているのかもしれません。
【不織布マスク等繊維製品の輸出国シェア】
(2019年)
出所:Trade Mapより、ありがとう投信作成。
一方、輸入シェアの方はどうなっているかというと、米国、日本と続いています。日本ではマスク供給の8割を輸入に頼っていると先ほど言いましたが、こちらの図を見てもわかるように依存度の高さを裏付けているように見受けられます。
【不織布マスク等繊維製品の輸入国シェア】
(2019年)
出所:Trade Mapより、ありがとう投信作成。
マスクに関わらず、新型コロナウイルス感染拡大の国境を越えたサプライチェーンへの影響は、グローバル化を推し進めてきた先進国共通の課題になることと思いますが、それにしても日本の中国への依存度は大きいように見受けられます。また、日本は少子高齢化など国内需要の乏しい背景からか、あるいは資源の少ない島国で加工業を主としていたためか、需要サイドでも中国への依存度はかなり高めになっているようです。
出所:『未来投資会議資料』より、抜粋
少し長くなりましたが、振り返ってみれば冒頭で述べたように、最初に高額マスクに出会ったのはお弁当屋さんでした。今日本で中国から直接使い捨てマスクを卸している業者の多くは、新型コロナウイルス感染拡大以前から中国の工場と付き合いのある会社が多いようです。昔板前をしていた頃の知人から聞く話によると、割り箸やお弁当容器を販売する業者なども中国からマスクを卸しているようで、冒頭話した弁当屋とリンクして、シックリきました。
少し古いデーターで恐縮ですが、参考までに下記図では割り箸の国内産生産比率を示してみました。マスク以上に輸入に頼っている点が確認いただけると思います。これからの『ウィズ・コロナ』『ポスト・コロナ』を考えるうえで、生産拠点の国内回帰への流れは一つのテーマになると思いますが、補助金をもらってマスク製造を始めた国内生産メーカーのマスク価格(冒頭の図参照)一つ見ても、決して簡単なことではないという点は明白でしょう。
【割り箸の供給量推移】
出所:森林・林業学習館より、ありがとう投信作成。
弊社にもアベノマスク届きました♪
なぜ運用会社に届いたかは理解不能ですが・・・
さて最後になりますが、ゴールデンウィーク真っただ中、マスクの話しで〆ても全く面白く無いので、39クッキングと39ツアー(脳内旅行いってみよう編)を参考に、乗り切りましょう!
【脳内旅行いってみようコンテンツ】
●39ツアー【慶良間諸島①:渡嘉敷島でのご宿泊は民宿39で464939! 】
●39ツアー【慶良間諸島③:座間味島でとうとう無人島に流れ着く 】
【巣ごもりクッキングコンテンツ】
●39クッキング【クラムチャウダーをパイシートで包んでみたら・・・】
●39クッキング【こんな時は即席アクアパッツァで冷静になりましょう】
【使い捨てマスクネタだから・・・使い捨てつながりで・・・使い捨て内視鏡も!】
39!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
◆記載内容について: 資料に記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
◆株価指数について:記載されている各国・地域市場の指数は特別注記が無い場合は以下の指数を使用しています。
【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
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