新型コロナウイルスは長期戦
平素大変になっております。今月のありがとうトピックスも先月に引き続き新型コロナウイルスについてお話させていただければと思います。先月も少し触れましたが、基本的に新型コロナウイルスの経済や株式市場に対する影響は長期にわたると考えております。もちろん、ウイルスに対して治療薬・ワクチンが早期に開発できるのであれば、従来から言われているV字回復の可能性もあると思いますが、できたらできたでワクチン大量生産の進捗や配給方法などでまたもめると考えられますので、長期戦を前提にしておくことが無難だと思います。
受益者の皆様方におかれましても、外出自粛等で疲弊されていることとは思いますが、私ができることと言ったら39クッキングぐらいなので、ご興味ありましたらこれを機に料理でもしてみて下さい。作ったらちゃんとお片付けもしましょう。じゃないといつもご飯作ってくれている奥様等がキレて、別な問題が生じる可能性がありますので・・・。(私は責任取れませんからね。)
さて、外出自粛について興味深いデータがあったので、今日はここからスタートしてみましょう。2019年7月~8月に行われた内閣府の『新型インフルエンザ対策に関する世論調査』の結果を基にヒトはどのくらいの間外出自粛できるのかを見てみましょう。0日の2.2%は衝撃的ですね。仕事で外出しないといけない等、やんごとなき理由があるのでしょう。分布の結果を加重平均してみると大体2週間ぐらいになります。緊急事態宣言が発令されたのは4月7日なので、そこから2週間だと・・・4月21日くらいでしょうか、平均的にはここら辺が我慢の限界のようです。その次の週からゴールデンウィークが始まりますので、自粛疲れで気が緩みウイルスの感染が増加するかもしれません。なので、このようなことにならないように繰り返しになりますが私の39クッキングを読み返し、料理のディープな世界に浸ってください。我を忘れて没頭すればあっという間に1ヶ月経ちますよ。
【外出自粛を我慢できると思う期間についての世論調査】
(全体版)
出所:内閣府資料より、ありがとう投信作成。『その他』と『わからない』の回答は除いたため合計が100にならないので注意。
【外出自粛を我慢できると思う期間についての世論調査】
(大都市と町村比較)
出所:内閣府資料より、ありがとう投信作成。『その他』と『わからない』の回答は除いたため合計が100にならないので注意。
下記では外出を控えられない理由について回答率の高い順に並べてみました。濃い棒グラフは仕事に関連した理由になります。仕事関連がボトルネックになっている点が一目瞭然ですね。以前からテレワークなど、さまざまなものがデジタル化されてきているトレンドはありましたが、この新型コロナウイルスによりその変化はさらに加速することでしょう。当ファンドが投資している米国大型株式市場担当ファンドの上位銘柄によく出てくるマイクロソフト等の株価を見ているとこういった傾向を裏付けているように思えます。
【外出を控えられない理由】
(全体版、複数回答可)
出所:内閣府資料より、ありがとう投信作成。前出の外出できる期間が『0日』『1日』『2~3日』であると回答した人に理由を聞いたもの。複数回答が可能であるため、分布の合計が100を超える。
大都市では仕事に関する心配ごとが、町村に比べて多いようにみられます。一方、町村では介護などの世話が比較的多くなっており、それぞれの地域で外出を控えられない理由にも違いがみられますね。今回の緊急事態宣言の期間は1ヶ月程度とのことですが、欧米諸国や過去の例なども鑑みるに、その程度の期間で済むとは到底思えません。感染拡大の封じ込めが困難な現状からすれば、今後考えられうる策としては、集団免疫(人口の約半数が一度感染するかワクチンで免疫を獲得してウイルスが広がらない状態)への移行が考えられます。その場合、医療サービスのキャパシティを超えないレベルで一定人数が感染するよう感染拡大を継続的にコントロールする必要が出てくるので、緊急事態宣言が複数回行われる可能性も否定できないでしょう。私が参考にしているアナリストリポートにも現状の医療キャパシティでは集団免疫獲得までに最低でも1年以上かかるのが現実的と試算されております。もしそうなったら延期されたオリンピックどころじゃないですね。
【外出を控えられない理由】
(大都市と町村比較、複数回答可)
出所:内閣府資料より、ありがとう投信作成。前出の外出できる期間が『0日』『1日』『2~3日』であると回答した人に理由を聞いたもの。複数回答が可能であるため、分布の合計が100を超える。
さて、次はもうすこし大きな視点から、新型コロナウイルスとの長期戦を考えてみましょう。4月14日にIMFが最新版の『世界経済の見通し』を公表しました。2020年の実質GDP成長率をマイナス3%と新型コロナウイルスの影響が出る前の1月時点の予測(+3.3%)から大幅に下方修正しました。一方、2021年の成長率については各国の政策支援などもあり、ベースシナリオとして+5.8%と予測しているようです。私個人の印象ですが少し楽観的すぎるように思えます。
【世界経済見通し】
(実質GDP成長)
出所:IMFより、ありがとう投信作成
アナリストの企業利益予想も下方修正が続く・・・
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
IMFの予測では、2021年末まで行っても、今年1月予測(ウイルス前)のベースライン(図中点線)を下回る水準...景気の下振れはそんなにすぐ元には戻らない。
【GDP水準の推移】
(四半期ベース)
出所:IMFより抜粋
下記のモデルでは、新型コロナウイルスの経済へ対する影響をシナリオごとにみせています。都市封鎖などの措置の直接的な影響として2.5%GDPを低下させるシナリオとしてそれほどシビアじゃないシナリオ(Less severe scenarios)を上段、下段では倍の5%GDPを低下させるシナリオとしてもっとシビアなシナリオ(More severe scenarios)を示すことにより、ウイルス拡大が経済へ与える影響の度合いを表しています。一方、向かって左側はV字回復シナリオ、右側はW字回復シナリオを表しています。個人的にはたかが1ヶ月ロックダウンしただけで、ウイルスが終息するとはとても思えませんので、再度感染拡大が起こることを想定したW字回復シナリオの方が現実的だと考えております。W字回復シナリオでは、経済活動への下振れ影響が長期的に続くので、2020年中に経済が持続的な回復フェーズを迎えるのは難しそうです。
【各シナリオにおける地域ごとのインパルス応答】
出所:BIS『The macroeconomic spillover effects of the pandemic on the global economy』より、抜粋
下記では、上記で紹介した4つのシナリオそれぞれについて、8四半期間におけるGDP水準の推移を表しています。特にもっとシビアなシナリオ(More severe scenarios)の2020年第2四半期におけるGDPへのマイナス影響は大きいですね。先進国はおおむね-9%ぐらいの下振れ幅で、エマージングに至っては-10%をゆうに超えるインパクトです。そしてその後の回復も皆緩やかな線を描いています。V字回復、W字回復じゃなくてナイキのロゴみたいな形の回復になりそうですね。
【GDP水準への影響】
出所:BIS『The macroeconomic spillover effects of the pandemic on the global economy』より、抜粋
まあ、ゴチャゴチャと暗い話をしましたが、新型コロナウイルスとの戦いは長期戦になりそうなので、お家で39クッキングをフル活用していただき、料理マスターになりましょう!皆さんが巣ごもり中でも、楽しくなれるようなコンテンツを増やしていけるよう精一杯努力する所存でございます。
ご参考までに今月の映画
映画『FLU 運命の36時間』予告編
感想:うん。これはひどい。
どうせなら39時間でもいいじゃん。
39!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
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