MATANA(またな⁉)
最近の日本株の上昇はなかなか力強い勢いを感じますね。さて、今月のありがとうトピックスでは一部の生成AI、ChatGPT関連銘柄の株価が急騰しているので、その点について簡単にふれてみたいと思います。詳しくは現在全国で開催中の『これからの世界経済の行方/ 新投資先ファンド紹介セミナー』でも解説しておりますので、ご興味のある方はご参加いただけますと幸いです。
最近『MATANA』という略語をよく聞くようになりました。
M=Microsoft、
A=Amazon、
T=Tesla、
A=Alphabet(Googleの親会社)、
N=NVIDIA、
A=Appleと、
大手ハイテク企業名の頭文字をとってMATANAになります。下図では、年初からのMATANA6社の株価推移を表してみました。ご案内のとおり、銀行が潰れたり色々あっても今年の米国株式市場は底堅く上昇してきました。そんな米国株式市場全体の動きが物足りなく見えるぐらい、MATANAの株価上昇は強烈ですね。特に生成AIに使われるチップ供給で世界的なリーディングカンパニーであるNVIDIAの上昇が目立ちます。電気自動車で有名なTeslaの株価も足元復活してきました。こういった大手ハイテク企業の株価は昨年の利上げの影響で大きく調整していましたが、結局のところハイテク産業はメガトレンドにのっているので、調整が終わればちゃんと買われるといういつもの構図になっています。参考までにですが、図中に『保』とハンコを押した銘柄については現在当ファンドでも保有しております。
【MATANAの株価推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。2022年12月末を100として、2023年6月12日までの推移
MATANAという造語はシリコンバレーのテック企業をリサーチされる外国の方が名付け親らしいので、日本語の意味を含めて命名されたかは定かではありませんが、日本人の私からしたらまさに『またな?』という印象を強く受けた造語でした。なぜなら、コロナ禍初期の頃に『S&P5>日本株式市場?』というブログを書いた際、今のMATANA相場と同じように、一部の企業の株価が急騰する現象がみられたからです。
詳しくはリンクのブログを見ていただければと思いますが、そのころは『GAFA+M』(Google、Apple、Facebook、Amazon+Microsoft)と呼ばれる企業群の株価がコロナ禍のテックバブルで急騰しており、『この5銘柄の時価総額だけで日本株式市場全体を超えるよ』といった内容の話でした。あえて『信長の野望』の戦国武将で表現するのであれば、織田信長、豊臣秀吉、明智光秀、上杉謙信、武田信玄の5人のだけで数十万の兵と戦い、天下統一したイメージでございます。Facebookはコロナ禍でMetaに名称変更したので信頼の置けない奴という立ち位置の明智光秀になり退出していただき、少し新しい風入れようぜというノリで真田幸村と伊達政宗の2名を加えてMATANA6人衆に着地したようです。真面目な話をすると、Metaは他の5社と比べ広告収入に頼るビジネスモデルになっているため、除外された背景があるようです。
下図はどこかで見たような構成ですね~。年初からの米国株式市場の上昇はMATANA6社の株価上昇に寄与するところが大きいようですね。このような一極集中相場は持続性に問題があると思います。特に大手ハイテク企業の事業内容はメガトレンドにのっており、株価は毎度期待先行で上がり、熱が冷めたら急落します。しかし、少し時間軸を長くとると『またな!』と言わんばかりに資金が戻ってくるという点も大切な教訓だと考えております。
【MATANAとS&P494の時価総額の変化】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。2019年12月末を100として、2023年6月12日までの推移。S&P494は直近のS&P500採用銘柄からMATANA6銘柄を除いた494銘柄の時価総額。
こちらも前回同様にMATANAとTOPIXの時価総額を比べてみました。上述したように昨年ハイテク銘柄は大きく調整しましたが、結局TOPIX構成銘柄の2,156社の時価総額合計以上の水準をキープして、足元では倍近くまで拡大しております。極端の話をすれば、MATANA6社の時価総額で日本株2,156社の株を全て買って、もう一回買えるぐらいのお釣りがくる規模でございます。
【MATANAとTOPIXの時価総額の推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。TOPIXの時価総額はドル換算ベース。
投資家の視点でこの一極集中相場を考えるのであれば、近いうちにまたバブルが弾ける可能性が高いので、一旦こういった人気の銘柄を売却するのが適切かもしれません。ただし、これがまだ続く可能性もあり、また売ったとしても次はどのタイミングで買うかが問題になります。長く投資されている受益者の皆様はすでにご理解いただいていると思いますが、売買のタイミングを見極めるのは容易ではありません。逆に株価が急落した局面では、もうだめだと投げ売りされてしまうケースも多く見てきました。
長期投資家としての視点で考えてみると、短期のボラティリティに惑わされず、ドル・コスト平均法でコツコツ積み立て投資を継続していた方が結果的にパフォーマンスは良くなる傾向にあります。特にハイテク産業は『人は城、人は石垣...じゃないかも?』でも述べたように、なんだかんだ言って息の長いテーマですし、日本のお家芸の製造業などと比べてコスト合理化も機動的にできるので、景気後退局面の環境変化への対応も迅速にできる業種だと考えております。足元日本株式市場は楽観的な相場展開になっておりますが、生成AIなどハイテク技術の本丸を輸入に頼る日本は長期投資の対象企業が海外企業に比べ少ないというのが私の実感です。『バフェット効果』、『インバウンド回復への期待』、『東証のPBR1倍割れ改善要請』などで盛り上がる日本株式市場ですが、いずれまた何かしらのショックで急落する局面を迎えることになります。その時を想定して常日頃心に留めておくべきことは、株価が戻らずまた30数年塩漬け状態にならない産業構造かどうかという点だと思います。『失われた30年またな!』とか冗談では済まされませんからね。
【長期での株価推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。2001年1月末を100として、2023年5 月末までの推移
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ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
◆記載内容について: 資料に記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
◆株価指数について:記載されている各国・地域市場の指数は特別注記が無い場合は以下の指数を使用しています。
【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
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