Go To ニューノーマル
さて今年も残すところ数日になりました。受益者の皆様方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?今年は何といっても新型コロナウイルスに振り回される一年だったと思います。株価も乱高下しましたが、日々の生活においても、『新しい生活様式』など様々な変化を余儀なくされた年でもありました。
私自身も足元のニューノーマルな環境に対応すべく在宅ワークなど新しい働き方の中で、家に籠る機会が増えたのですが、そんな時ふと子供の本棚をみてみると、『ずかん・じどうしゃ』といういかにも男の子が好きそうな絵本が目にとまりました。この絵本は2020年2月第88刷発行の新品なのですが、初刷はなんと1977年5月とのことで、殿堂入りのベストセラー絵本のようです。
本の中身をパラパラと見てみると、う~ん...こんな車もう走ってないだろwみたいなのがたくさん出てきました。子供に見せてみると、一応『ブーブー』というので認識できているようですが、どこか腑に落ちなさそうなリアクションです。流石に40年くらい前の車と比べると、だいぶデザインも変わってきているのでしょうがないことだと思います。それでは、これから40年後の子供たちはどんな『ずかん・じどうしゃ』を見ているのでしょうか?ということで今回は、自動車業界のニューノーマルについて簡単に触れてみたいと思います。
【バスのページ、渋いですね~】
コロナ禍の今年の株式市場で一番勢いのあった完成車メーカー銘柄は間違いなくテスラだと思います。あれよあれよという間に、世界の完成車メーカー時価総額No.1に躍り出て、少し調整するかな?と思えば、どんどん上昇を続けました。一説によるとコロナ禍で現金給付や失業保険を貰っている米国のミレニアル世代が投資アプリのロビンフッドを通してテスラ株を買っている影響もあるようですが、なかなかこの勢いは止まりそうにありません。
【時価総額の推移比較】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
そんなこんなで気づいたら、同社は先日12月21日にS&P500種株価指数の構成銘柄に採用されることになり、指数算入の期待からまたまた買われる展開が続きました。前回の39トピックスでも言及したように、次期米大統領の環境問題に対する姿勢からも、電気自動車の販売がメインとなっている同社への追い風はさらに強まっているようです。
同社の資料を見てみると、売上の一部にRegulatory creditsという項目があります。これは米国の完成車メーカーは規制によって電気自動車などのゼロ・エミッションのクルマを一定割合販売することが義務付けられているようで、その販売が規制されたレベルに達しない場合は、違反金を払うか、他のメーカーからcreditsを買い取る必要があるとのことです。違反金を払うよりも、テスラの様な規制をクリアするような車をたくさん販売しcreditsをたくさん持っているメーカーから買い取ったほうが安く済むらしく、EV化が遅れている大手GMなどがテスラにお金を払っているという構図になっているようです。電気自動車作って社会貢献していますよ!の小手先のアピールではなく、ちゃんとその点オカネで評価されるのでなかなかシビアな世界になっているようです。下図では、同社のRegulatory creditsと当期純利益の推移を示してみました。ぶっちゃけRegulatory creditsが無いと常に赤字転落ですが、creditsを売れる立場にいられるのも実力というのがニューノーマルな世界観なのでしょう。
【テスラのRegulatory creditsと当期純利益】
出所:ファクトセット、会社資料より、ありがとう投信作成
先日、日本政府は2050年の脱炭素社会の実現に向けた実行計画を取りまとめ、その中で乗用車については2030年代半ばまでに新車販売をすべて電動車にするなどの具体的な目標を設定しました。この電動車にはハイブリッド車も含まれるそうなので、ハイブリッド車の技術を有する日本の完成車メーカーにはまだなんとかなりそうな気がします。しかし、イギリスでは2035年にはハイブリッド車も新車販売が禁止になるそうなので、この傾向が世界的に拡大するとなると、輸出にも支障が出るので、本格的に電気自動車や燃料電池車の開発を急ぐ必要が出てくることでしょう。以前のブログで、日本の上場企業に占める輸送用機器業種の構成比率が大きいと言及しましたが、仮に電気自動車がメインになる時代が来るのであれば、エンジンは不要になりますので、自動車部品のサプライチェーンもガラッと変わり、国内の雇用に与える影響も小さくはないでしょう。
石油メジャーのエクソンモービルがダウ工業株30種平均の構成銘柄から除外され、一方電気自動車で世界を変えようとチャレンジしてきたテスラがS&P500に採用され日の目を見る一年になりましたが、ここでもひょっとしたらニューノーマルが本格的に動き出しているのかもしれませんね。ここまでテスラを持ち上げておいてなんですが、当ファンドではテスラは保有しておりません。以前のセミナーでもお話させていただいたように、自動車の電動化のメガトレンドには国内銘柄でいえば日本電産、海外銘柄でいえばドイツのパワー半導体大手Infineon Technologiesなどで恩恵を受けられるよう組み入れております。40年後の『ずかん・じどうしゃ』で描かれている自動車では、ハンドルなんかなくなっていて、空を飛んでいたりするかもしれませんね。そもそもそれは自動車と呼べる乗り物なのでしょうか?ひょっとしたら、そんな時代が始まろうとしているのかもしれません。と一抹の不安を感じながらもワクワクしながら年越します!今年も大変お世話になりました!!39です!!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
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