垂直統合型の廃棄物処理サービスで活躍!:Casella Waste Systems(米国)
2022年04月12日(火)
最近子供が『働くクルマ』にハマっていて、街中でバスや重機を見ると『バス!ショベルカー!』と大興奮でございます。以前は電車が一番のお気に入りだったようですが、最近は働くクルマのバリエーションの多さに感動したのか、興味の対象が変化してきたようです。何にでも興味を持つキラキラした子供の目を見ていると、私も特定のセクターの銘柄に縛られず、幅広くビジネスモデルを分析すべきと反省している次第でございます。子育てをしているつもりが、実は親が学ぶことの方が多いのかもしれませんね。
さて、多数ある『働くクルマ』の中でも、最近の子供のトップピックはゴミ収集車になります。朝保育園に行く途中に、近所のゴミ収集所で見かけることが多く、収集しているオジサン達に手を振ったら快く返してくれるのも嬉しくて、ハマったようでした。コロナ禍で家にこもりがちな日々が続いていますが、家でもゴミ収集車のYouTube動画を見て、エキサイトしております。中でも、米国のゴミ収集車は日本とは異なり戦闘力39倍ぐらいのスケールなので、何度も何度も繰り返して見ておりました。と、いうことでやや前置きが長くなりましたが、今月の厳選投資銘柄紹介は米国のゴミ収集・廃棄物処理会社Casella Waste Systemsに注目してみましょう!
再生回数1億3千万回越えだと・・・
【子供のためのごみ収集車、リサイクルについて学ぶ】
最初に事業別の売上高構成から事業内容をザックリ見てみましょう!売上の半分近くが廃棄物収集・運搬から成っています。次に廃棄物処理も2割程度の売上貢献があります。他にはリサイクルサービスや蒸気を活用した発電など廃棄物収集・処理から派生した事業も育っているようです。昨今のSDGsとESGブーム的には、注目が集まりそうな事業ですね。
【事業別の売上高構成】
2021年12カ月分
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
もう少し同社の事業内容を深堀してみましょう!一見同社は小型株で、今まで紹介してきたピカピカの成長株と比べるとそれほど・・・といった印象を受けますが、同業界の需要・供給動向を見ると、同社の成長ストーリーにご納得いただけると思います。まずは、売上高構成約2割の廃棄物処理の事業環境を確認しながら、成長ドライバーの根源を探ってみましょう!下図では、米国における1960年からの廃棄物量の推移とその内訳、さらに都市人口の推移を表してみました。都市人口が増えるにつれて廃棄物の絶対量も増加している点が確認できると思います。また、廃棄物処理状況の内訳を見てみると、1990年代頃から埋立以外の処理方法も増えていますが、未だ半分以上の廃棄物が埋立によって処理されているようです。よって、埋立地を確保し続けることがこの業界において非常に重要なファクターになります。この点、Casella Waste Systemsは主に人口密度の高い都市が多くある米国北東部で事業を展開していて、この地域は埋立地容量の制約があり新規の埋立地許可はまれで、今後の埋立地の拡大余力も限定されていることから、大都市圏で需要は多い反面、埋立地供給が限られるといった良好な事業環境が整っています。
【廃棄物処理状況と都市人口の推移】
米国
出所:U.S. Environmental Protection Agencyより、ありがとう投信作成
都市人口が増えれば、
建物の建設・解体も増えて廃棄物も増える・・・
家庭向けゴミだけでなく、
事業者向けゴミも増える・・・
【米国の建設支出の推移】
出所:FREDより、ありがとう投信作成
大都市の多い北東部の開発余地は少ないように見える・・・
【米国の埋立地の歴史】
赤は開設
緑は閉鎖
円グラフの大きさは規模
出所:U.S. Environmental Protection Agencyより、一部抜粋
同社の推計によると、事業展開する北東部のいくつかの州において廃棄処理能力の不足が懸念されています。例えば下図のマサチューセッツ州では、すでに足元の廃棄量がキャパシティーを超えており、ニューヨークなどでも2024年には処理能力が不足に転じると予想されています。よって、処理地の拡大が急務であり、これまでの実績を誇る同社の競争優位性が発揮できると考えられています。まさにno time to waste の状況ですね。
出所:会社資料より一部抜粋
廃棄場の確保・維持、自治体や地元住民との折衝に加えて、処理場の設営や運営には相当な資本と労働力、事業規模が必要になり、さらには当局による新規の埋立地の審査が長期化するなど、新規参入には高いハードルとなる傾向があります。よって、同社の参入障壁も高く、需給面の追い風もあり、単価を上げやすい環境が整っているようです。需給面の追い風ハンパないですね~
足元はコロナ禍の影響もあり値上げ率は鈍化しているが、
ほぼ毎年値上げ・・・
現状を鑑みると長期的にこの傾向は続くと考えられる・・・
【廃棄物処理の価格成長率】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
次に、同社売上高構成の50%を占める廃棄物収集・運搬についても詳しく見てみましょう。同事業は家庭向けと事業者向けの二つの顧客層に分けることができ、40%程度が家庭向けからの売上貢献で、残り6割近くが事業者向けになっているようです。コロナ禍で事業者向けについては、ロックダウンなどで閉店・休業を余儀なくされた飲食店や、通常稼働率が下がっている病院などの需要減で厳しかったようですが、一方家庭向けについては巣籠スタイルでゴミ収集の需要が増加傾向にあったようで、幅広い顧客ポートフォリオのおかげもあり、地元の小規模事業者に対して優位に立つことができたようです。廃棄物収集・運搬は上述した廃棄物処理のように規制要因や廃棄場などの大型資産に左右されるビジネスモデルとは少し異なり、いかにゴミ回収所からベースまでの距離を短くするなど、最適なゴミ収集ルートを設定することにより利益を最大化する傾向があります。例えば顧客層別でも運用ストラテジーが異なります。家庭向けは、少ない量のゴミを多くの家を周り回収する必要があり、一方事業向けは家庭向けに比べて1回当たりに回収できるゴミの量は多く、回収ポイントは少なくなります。このように顧客層で特徴が異なるので、最適なルート設定を導き出すのはなかなか難しい作業のようです。また、原則長距離の運搬はコスト的に見合わないケースが多いのですが、力のある大手などでは鉄道運搬により効率化を図っており、そこまで考慮するとなると、最適解を導き出すのはさらに難しくなり、同社の腕の見せどころでしょう。
同社が主に事業を行っている北東部に
廃棄物処理に必要な様々な拠点を効率よく配置
出所:会社資料より一部抜粋
コロナ禍でゴミ収集作業員などの人員確保が難しく、採用コストも上昇していますが、コスト増加分をちゃんと顧客に転嫁できている模様です。コロナ禍のインフレはまだまだ続きそうですね・・・
【廃棄物収集・運搬の価格成長率】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
競争環境についてもザックリ考えてみましょう。米国のゴミ収集・廃棄物処理業界は大手5社と多くの小規模事業者によって成り立っており、Casella Waste Systemsは上場する廃棄物処理会社としては第5位で市場シェアは1%程度に留まっております。一方で、業界では複数の州をまたぐ中規模事業者や数千の地場・小規模事業者が存在しており、業界内の集約が進んでいる段階のようです。同社も数多くのM&Aにより成長を続けています。例えば、北東部では一般的に州や地域社会によってリサイクルが義務づけられており、収集からリサイクルまで垂直統合されたビジネスモデルを有し、こういった規制にも対応できる同社は地元の小規模事業者に対して優位に立ち、M&Aにも有利に働いていると考えられますね。
最後に参考までに株価を見て終わりにしましょう。足元の需給環境はやはり追い風のようで、ここ数年は大きく上昇していますね。オマケまでにですが、最近米国北東部在住の知人から聞いた面白い話を紹介させてください。彼の住んでいる集合住宅でも最近のSDGs&ESGブームの圧力もあってか、リサイクル用の細かい分別を試験的に導入したそうです。その後ほどなくして集合住宅のゴミ収集所に張り紙が貼られ、そこには『我々にはまだ早すぎた』と書かれて、従来の超テキトーなゴミ出しに戻ったそうです。日本人のゴミ出しの分別が細かすぎるのか、それともアメ人がテキトー過ぎるかの議論は別にして、テキトーに捨てられたゴミを収集して、リサイクルできるまでプロセスするだけでも廃棄場では大変苦労されていることでしょう・・・米国での同業界の成長余地はかなり大きそうですね・・・
【長期での株価推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価と指数は1999年12月末を1として指数化、2022年3月末までの推移。外貨建ての株価と指数はすべて月次で邦貨換算した日本円ベース
【Casella's Approach to Sustainable Recycling】
39!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
◆記載内容について: 資料に記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
◆株価指数について:記載されている各国・地域市場の指数は特別注記が無い場合は以下の指数を使用しています。
【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
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