ありがとうの本棚(今月の一冊『財布は踊る』)
財布は踊る (新潮文庫 は 79-2)
- 2024/12/24原田 ひ香 (著)
今月は、ドラマ化もされたヒット作「三千円の使いかた」の著者によるお金にまつわる小説を紹介します。本書は、一章ごとに主人公が変わりますが、1つの財布がその人たちを巡り、繋いでいきます。それぞれのドラマをたどっていくうちにリボ払いや投資詐欺、奨学金返済などの日常に潜むお金の落とし穴やトラブル、その対処方法などを学べる作品です。
第一章の主人公である主婦は、ハワイ旅行に出かけてルイ・ヴィトンの財布を買う夢のため、コツコツと節約し、つつましく暮らしていました。ついにハワイで憧れの財布を手に入れますが、帰国後、夫のリボ払いによる借金が発覚し、一度も使わずに泣く泣く手放すことに。やがて、この財布が様々な人たちの手に渡り、それぞれの人生が描かれていきます。
登場人物たちは皆、様々な事情から「今より少し、お金がほしい」人達で、FXの情報商材の勧誘する者、株で大損をして会社を辞めた者、奨学金返済に苦しむ者など、現在を象徴するお金の問題が物語に深く関わっています。「ほんの少し何かが違っていたら、自分や身近な人もこうなっていたかもしれない」と感じるほどリアルな設定で、他人事とは思えない話ばかりです。
お金は必要ですが、良くも悪くも人を振り回すため、お金の稼ぎ方や使い方には価値観が反映されるということを再認識させられます。ややこしい金融のことを物語にうまく絡めているので、スっと理解でき、金融リテラシーが身につく、おすすめの一冊です。
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