デジタル時代のカギ管理屋さん:CyberArk Software(イスラエル)
2022年07月13日(水)
さて、今月の厳選投資銘柄紹介ブログはデジタル時代に欠かせない企業のお話になります。近年サイバー攻撃により、企業や組織からの個人情報流失などのデジタル時代特有のニュースをよく目にするようになりました。最近では戦争の一つの手段としてサイバー攻撃が使われるようにもなってきたようです。世の中のデジタル化が進めば進むほど、こういった攻撃に対して、組織内のセキュリティ管理の重要度は増していくことでしょう。そんなデジタル社会の長期的なニーズにこたえるサイバーセキュリティサービスを提供しているのが、今回紹介させていただくCyberArk(イスラエル)になります。同社はイスラエルに本社を置き、特権アクセス管理ツールを開発。特権資格情報や機密情報によって生じるリスクを軽減するための包括ソリューションを提供しております。そんなこと言われても、どんなサービスか全く想像できませんね~
サイバーセキュリティと一言でいってもいろいろな方法・サービスがあります。同社はサイバーセキュリティの根幹と言えるPAM(Privileged Access Management 、特権アクセス管理)領域のサービスを中心に成長してきました。PAMってなんだよ!という感じだと思いますが、私がだらだら説明するより、同社が分かりやすく下の動画でPAMの概念を解説してくれているので、そちらをご参照ください。動画はナイトクラブに入る際のID確認から、従業員onlyの部屋、VIP onlyの部屋へのアクセス管理を例にしています。また、いったんナイトクラブに入れたとしても、不審な行動をする人だったら退場してもらうなどの管理にも言及していましたね。要するにデジタル世界にも、特定の人しか入れない場所や場所自体のルールを変更できたりできる権限のような概念があり、そういった場所や権限への適切なアクセスを管理・監視するのがPAMのザックリした考え方になります。デジタル社会のカギ管理屋さんみたいなものをイメージしていただければおおむねOKでしょう。
What Can Nightclubs Teach Us About Cybersecurity and PAM?
カギ管理ならそんな難しい話じゃないのでは?と思われる方もいるかもしれません。しかし、最近ではクラウド化やテレワークの普及によるエンドポイント増で、あらゆる箇所にカギをかけて、管理する必要性が増しています。さらにはこれらのカギは人に付与されるだけではなく、マシーンラーニング、AI、業務の自動化などの進展からマシーンとマシーンどうしがアクセスし合うことも増えており、そこにもカギが必要になり、その数は膨大な量になるようです。カギがどんどん増えていって、カギを束ねるリングがすごく大きくなるイメージです。またPAMのサービスでは、『誰が』、『どの特権アクセスを』、『いつ』使ったなどの履歴も管理できるようになっており、監査の際にも有効に機能するようです。私はずいぶん昔に米国の公認会計士試験を受けましたが、当時から受験科目の一部にITについての箇所もありました。ビジネス自体がデジタル化している中で、それを管理監督する側の対応も必要なんだな~と学生ながらに思ったものです。
デジタル化が進み便利になったが・・・
同時に泥棒の侵入経路も増えた
出所:会社資料より、一部抜粋
次に市場規模も見てみましょう。少し古いデータになりますが、2018年時点で同社は、業界の『獲得できる可能性のある最大の市場規模』を440億米ドルと推計しており、ポテンシャルの顧客層は企業・組織合わせて44,000社あるとしています。膨大な市場規模ですね~。そのうち10億ドル以上の売上高をあげる顧客を16,000社と想定し、それ以外は28,000社あるとしています。もちろん大手の顧客層を広げることは重要ですが、デジタル化が社会に浸透していく中で、比較的小規模な事業体へのアプローチも重要になっているようです。
出所:会社資料より、一部抜粋
さらに、同社の業種別顧客構成を見てみましょう。銀行&金融機関や政府機関などの割合が多くなっていますね。こういったお堅い大手顧客も重要ですが、デジタル化はいろんな業種に浸透していくので、中小含めた幅広い層へのアプローチが必要になり、同社の今後の成長ドライバーにもなるということですね。
【業種別の顧客構成】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
そのような背景から中小企業でも導入コストが低く抑えられるよう、同社は2021年年初より、サービスのサブスクリプション販売モデルへの積極移行を開始しております。下図でもお判りいただけるように、2021年からサブスクリプション形態からの売上高開示が始まっているようです。同社に限らず今まで厳選投資銘柄紹介ブログで紹介してきたIT企業では、サブスクリプションモデルによるサービスの浸透率を向上させています。最近紹介した例ではNemetschek(ドイツ)なども伝統的なライセンス販売からサブスクリプション販売へ舵を切っています。 サブスクリプションモデルは顧客目線で導入しやすいコスト体系という利点だけでなく、提供する企業側にもメリットがあります。例えば、CyberArkの例だと、伝統的ないわゆるワンタイムのライセンス契約だと、景気が悪くなった際にセキュリティへの予算が厳しくなったりなどで、システムの保守など一部の継続サービスは自前でなんとかだましだましするからと切られるかもしれません。サブスクリプションだと、そういったこともないので、景気後退局面で比較的強く、また継続課金なので将来の売上予想も立てやすいといったメリットもあります。
【売上高の推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
同社はPAM領域のサービス提供企業として最大手で、もちろんグローバルで事業を展開しております。日本ではあまり聞き慣れないかもしれませんが、ひょっとしたら皆さんが働いている会社の特権アクセス管理も同社のテクノロジーが使われているかもしれませんね。
【国・地域別の売上高構成】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
最後に株価を見て終わりにしましょう。同社は1999年創業ですが、IPOは比較的最近になります。サイズとしてはいわゆる中小型株のカテゴリーなので、やや不安定なところもありますが、同社の提供しているサービスは今後も中長期的に必要とされることでしょう。当ファンドでは大型株から中小型株まで世界中の成長株に厳選投資しておりますので、ファンドを通してCyberArkのようにイスラエルに本拠地を置く企業の成長性を感じていただけますと幸いです。
【上場以来の株価推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価と指数は2014年9月24日を1として指数化、2022年6月末までの推移。外貨建ての株価と指数はすべて月次で邦貨換算した日本円ベース
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ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
◆記載内容について: 資料に記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
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【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
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