稼ぐスマートメーターでスマートシティでございます♪:Itron(米国)
2020年07月03日(金)
さて今月の厳選銘柄紹介では、米国の小型株でありながらスマートメーター製造・販売のニッチ市場で高いグローバルプレゼンスを有するItronについてお話させていただければと思います。同社は電力、ガス、水道使用量を検針するメーターを製造・販売する老舗メーカーですが、昨今のデジタル化のメガトレンドに乗るべく、最近ではリアルタイムで検針できるスマートメーターの製造・販売、またそこから得られたデータ分析による付加価値ビジネスへ事業を拡大しております。
通常、こういった電気とか水道とか公益関連ビジネスは『安定した業種』、『規制業種』、『参入障壁の高さ』といった特性がある一方、『低成長』、『収益力の低下』、『業界統合の遅れ』など、投資家目線ではなかなか評価に困るセクターでもあり、成長企業として厳選投資する対象になりうるかの判断が難しいところでございます。また、個人的には非常に地味~~で、超~~~~つまらないイメージの企業が多いのですが、同社の経営方針をみてみますと、今までの屋台骨だった従来のメーター製造・販売のプレゼンスをうまく活用したうえで、スマートメーター、データ分析などによる付加価値サービス提供を成長分野と明確化し、研究開発費を惜しまない点など、なかなか面白いビジネスモデルを構築しているように思います。
地味~~な公益関連ビジネスですが、せっかく都知事選前なので、景気よく小〇都知事並みのテンションでスマートに解説させていただければと思います♪スマートメーター導入でスマートシティ東京でございます♫
同社のビジネスは大きく3つの事業からなっており、①デバイス・ソリューションズでは、従来の検針メーターの製造・販売が主になっております。②ネットワーク・ソリューションズでは双方向通信機能を備えたいわゆるスマートメーター製造・販売、またそれに付随するソフトウェアサービスで構成されています。2億台を超えるスマートメーターを有しており、裾野が広がりますね~。③Outcomesは直訳すると『結果』ですが、あまり良い訳が思いつかなかったので、そのまま英語で記載させていただきます。ざっくりとしたイメージで説明すると、スマートメーターなどで収集したデータを分析することにより得られる付加価値の高いサービスになります。例えば、自動でガス漏れが検知できる様になり、リアルタイムで管理者へ連絡するサービスなどです。
【売上高構成2020年Q1】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
【従来の屋台骨を土台に成長分野へ事業を拡大】
出所:会社資料より、抜粋
【売上高の推移と内訳】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
Outcomes事業の利益貢献度が上がってきた。
【事業別営業利益率の推移】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
小型株水準の企業では、先月解説したBJ's Wholesale Clubの様にその国の内需に応えるビジネスモデルの企業が多いのですが、同社はメーターというニッチ市場で大きなプレゼンスを有しており、米国内だけに留まらずグローバルに拠点を持ち、製造・販売活動をしております。
【地域別売上高の構成(2020年Q1)】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
【国別だと・・・】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
【デバイス・ソリューションズ、地域別シェア】
出所:会社資料より、抜粋
【ネットワーク・ソリューションズ、米国内シェア】
出所:会社資料より抜粋
公益関連企業にありがちな、『御上からお金降ってくるので、どんぶり勘定でいいや~』みたいなことも無く、粛々とコストカットの合理化を推し進めており、近年では今まであまり行っていなかった外部へのアウトソーシングも活用しているようです。我が国の西の方の電力供給を主なビジネスとしている会社とは大違いですね~~元助役から金品なんてもらいません♫
出所:会社資料より、抜粋
だからと言って成長分野への投資はケチることなくちゃんと投資しています。大体売り上げの9%ぐらいまで研究開発費を使っているようで、その割合は成長分野へ多く振り分けられています。以前書いたブログ(カネを眺めて100年人生)で言及したように、日本の『失われた30年』の原因はバブル崩壊後にリスクをとれなかった日本企業が設備投資、研究開発費、人材教育をケチった結果でしたが、今もその傾向は続いており、こういう海外の成長企業を見ていると、その差はさらに広がるのだろうなと日々感じる次第でございます。
【研究開発費配分のイメージ】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
成長投資をしないとこうなります。
イタリアに負けるのは流石にムカつきますね。
ここでも意外な底堅さをみせるイタリア
新種のピザ開発か!?
出所:未来投資会議(第31回)基礎資料より、抜粋
最期にサクッとスマートメーター業界の動向ついて触れてみたいと思います。下図にもありますように、米国における公益事業向け設備投資額は同国のGDP成長率よりも高いペースで成長しており、生産性向上やコストカットの観点からスマートメーター導入も同様拡大していく見込みのようです。
【公益事業の設備投資額推移(米国)】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
公益事業は規制業種でもありますが、スマートメーターによる検針の自動化などの業務効率化、コスト合理化は徐々に地方政府に受け入れられているようです。
出所:会社資料より、抜粋
スマートメーターの普及については米国はもちろん、世界的にみてもまだまだ伸びしろは大きいようです。
【北米:検針自動化は大体52%】
【世界:検針自動化は20%以下】
出所:会社資料より、ありがとう投信作成
オマケまでに、以前大学の授業で日本の生産性の低さについて話す機会があり、その際参考にした資料を下に示します。今後10年間で自動化が可能になる確率の高い職業名のリストになりますが、上から3行目に検針員とあります。ふと、Itronの従来メーターからスマートメーターへ舵を切る様を見ていて、この資料を思い出したという次第でございます。同様に消えゆく、もしくはもう消えた職業に、エレベーターガールという仕事があると思います。私が幼いころに数度見かけたことがあったと記憶しておりますが、今年1歳になる我が子においては、????な仕事になることでしょう。どこかで聞いた話で大変恐縮ですが、エレベーターは人が運転するのが当たり前だった時代から、常時人がいなくとも動くようになった際、怖がって乗らない客が多くいたそうです。昨今期待されている、自動車の自動運転もそんな感じで社会に浸透していくのでしょう。
【自動化可能性が最も高い職業 】
参考までに・・
【自動化可能性が最も低い職業 】
出所:『日本におけるコンピューター化と仕事の未来』より、抜粋
参考までに、株価推移です。Itronについては、新型コロナウイルスで相場が大きく下がったところでポジションを構築し始めました。
【株価推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価は2014年12月31日を100として指数化、2020年7月1日までの推移。外貨建ての株価・指数はすべて日次で邦貨換算した日本円ベース。
パリも同社のスマートシティプラットフォームを採用しているようです。
稼ぐ東京は・・・
39!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
◆記載内容について: 資料に記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
◆株価指数について:記載されている各国・地域市場の指数は特別注記が無い場合は以下の指数を使用しています。
【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
関連記事
| トレンドTOPへもどる |