こわくない、こわくない
さて、今月は月初に世界株式市場が調整したので、こわくなってしまった方もいたかもしれません。特に日本株式市場の下げ幅が大きく、メディアなどではまるでこの世の終わりのように『大暴落だ!』と騒いでいたので、『こわい、こわい』と投げ売りされた方々もいたかもしれません。当ファンドでは幸いなことに、長期・分散・積み立て投資の有効性を理解されているお客様が多いので、換金される方はほとんどなく、むしろスポットで購入される方が多く見受けられましたので、この場を借りて感謝申し上げます。
日本勢は...下げ幅ダントツで金メダル!
上昇幅が大きかったから、下落幅も大きくなった?
【主要国・地域の株価、金価格比較】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。日本株は円建て、米国株&新興国株&金価格はドル建て、欧州株はユーロ建て、2023年1月4日を100として指数化、2024年8月23日までの日次データの推移
ということで、今月のありがとうトピックスでは今回の日本株下落の要因について考えてみたいと思います。何も知らないで怖がるよりも、理屈を知って怖がった方が精神衛生上良いですからね...。今回の株価急落は米国経済の景況感悪化懸念と日銀の利上げが重なったことによる円キャリートレードの巻き戻しで、為替相場がドル安円高に転換したためと言われております。そこで、試しに下記図では足元の上昇相場が始まって以来の日本株とドル円レートを比較してみました。円安になればなるほど日本株は上がってきました。一方、7月に入り弱い米経済指標が発表されるようになると為替相場は円高基調に転じ、日本株はドル円レートに沿う形で大きく下落しています。たしかに円キャリートレードの解消による円高が月初の日本株下落の原因に間違いなさそうですね。
【日本株とドル円レート】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。2023年1月4日を100として指数化、2024年8月23日までの日次データの推移
【日本株とドル円は強い正の相関】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。データは2023年1月4日から2024年8月23日までの日次データを参照、相関係数0.92、決定係数0.85
次に、日本企業と為替の関係についても見てみましょう。下図で日本の上場企業全体の地域別売上高構成を見てもわかるように、50%近くの売上が海外由来なので、為替が日本企業の業績に大きな影響を与えている点は理解いただけるでしょう。特に海外に進出している大手上場企業の方が為替の影響を強く受けると考えられ、そういった銘柄で構成されている株価指数はより為替の影響を受ける傾向にあります。このように、日本株に投資するうえで為替は切っても切れない存在です。そもそも自国通貨が高くなろうが、安くなろうが業績を継続的に成長できる企業であれば問題の無い話ですが、エネルギーや原材料、食料も海外頼みの日本にある企業の多くにとっては今後も為替の影響は逃れられないファクターであり続けることでしょう。
【日本の上場企業の地域別売上高割合】
出所:ファクトセットより、一部抜粋。データは2024年8月23日時点
【日本企業の海外生産・売上比率の推移】
出所:国際協力銀行より、ありがとう投信作成
基軸通貨であるドルを元手に投資する米国人は為替をあまり気にせずにいられますが、我々のように日本円しか稼げない日本人の投資家にとって為替は常に悩ましい存在です。ありがとうファンドも外貨建ての保有資産が9割を超えているので、為替の影響を良くも悪くも受けます。ただし、投資している海外の企業は為替などに負けず&頼らず価格決定力を有し継続的に企業業績を成長しうる企業だと考えておりますし、ある意味世界共通の通貨である金(ゴールド)にも分散投資をし、ショックに備えておりますので引き続きその点をご理解いただき当ファンドに向き合っていただけますと幸いです。
ということで後講釈的に言うと今回のパニック相場は、表面的には為替が悪さしたことになると思いますが、次のパニック相場は何が引き金になるかわかりません。そもそも、皆が予測しているリスクイベントは実現したとしても株価には織り込み済みでリスクにはなりません。故に、パニック相場はまたそう遠くない将来何度も起こることでしょう。『いつ暴落する?』など予測のできない事を考えるのではなく、マーケットはいつ暴落してもおかしくないという前提で向き合うべきだと考えます。この点について、個人でできる対策があるとすれば、投資はあくまでも余裕資産の範囲に留める。下落しても数年で戻ってくるような市場・企業に投資する(失われた30年なんて問題外)。また、マーケットに居続けることも重要だと思います。下の図を例にすると、マーケットにいる限り確かに暴落の影響は避けられませんが、それが怖くてもし投資をしていなかったら暴落前の上昇相場の恩恵も享受できなくなります。マーケットがいつ上がるor下がるかがわからないからこそ、下がったときのリスクにだけに怯えるのではなく、上昇相場で投資をしなかった場合の機会費用を冷静に考慮すべきだと思います。
【当ファンドと日本株式市場の推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。2023年1月4日を100として指数化、2024年8月23日までの日次データの推移
加えて心構えも重要です。良くも悪くも情報が溢れかえる時代なので、メディアなど短期的な関心を集めたい方々のノイズは多いものです。上述したようにマーケットは基本的には個人でコントロールできるものではありませんので、マーケットの乱高下に振り回されるのではなく、マーケットに向き合う自分をコントロールしたほうが合理的でしょう。毎度同じことの繰り返しで恐縮ですが、自身の資産形成のゴールを見据えて、平常心で余裕資金を淡々と投資するのが結局のところ一番の近道だと思います。
最近私は日曜日8:30分から始まるアニメ『わんだふるぷりきゅあ!』を三歳になる娘と毎週欠かさず観ています。娘は登場人物のキュアリリアンという中学2年生の女の子がお気に入りらしく、キュアリリアンの決め台詞である『こわくない、こわくない』シーンでは、テレビの前でキュアリリアンになりきって『こわくない、こわくない』と言いながら変身しています。ありがたいことに、子供達は毎週日曜日の朝放映開始前にちゃんと起きて、オープニング曲を家族で歌い、『こわくない、こわくない』を復唱し、エンディング曲を家族皆で踊るという生活リズムが出来上がりました。おかげさまで、猛暑だろうが嵐だろうが関係なしに楽しく日曜日をスタートすることができます。たまにオリンピック的特番のようなノイズ入ったりすると調子が崩れる週もありますが、資産形成も同じようなものでコツコツのリズムを習慣づけることが重要なのかもしれません。もし父親が『パニック相場でハラハラドキドキして余裕ないから、今週のわんだふるは無し!』なんて言ったら、子供達は情緒不安定に育ちますし、それこそ父親の株は大暴落間違いないでしょう。こわくない、こわくない、平常心、平常心、余裕をもってマーケットに向き合いましょう。
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ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
◆記載内容について: 資料に記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
◆株価指数について:記載されている各国・地域市場の指数は特別注記が無い場合は以下の指数を使用しています。
【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
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