長期投資と夏野菜
資産形成や長期投資系のウェブサイトを見ていると、本ブログの写真の様に植物の芽が成長するさまをイメージとして載せているページが多いと思います。グリーンで地球に良いことしている感と、まるで金のなる木のようなポジティブなイメージを抱きやすいので多用されているのかもしれません。確かに、一般的にはそういったポジティブなイメージを受けるものの、植物を自発的に一から育てたことのある人はどのくらいいるのでしょうか?前回『Amazonで注文したものとは異なる商品が届いた件』で述べたように、都心のスーパーやドラッグストアで園芸用品をそろえるのは至難の業なので、人口が集中している首都圏で実際に家庭菜園をされている方はマイノリティーだと考えられます。もちろん大部分の方は小学生の頃に学校でアサガオや枝豆を育てた経験があると思うので、植物を育てた経験自体はあると思いますが、大人になってからはないかもしれません。毎日の仕事や育児に追われ、野菜はスーパーの特売で買うもの、育てるのは農家の方や、海外の方といった合理的な判断に着地しているのかもしれません。
金のなる木?
投資は地球にも優しい?
私はここ数年家庭菜園を続けているのですが、野菜を育てて実際に食べることのできる成果物にもっていくまでの過程は、アタマで考える以上に複雑です。野菜のinputは簡単に言うと日光、水、土の3つです。都心のマンションのベランダで日当たりのよい場所を確保するのは至難の業かもしれません。夏野菜を育てるスペースにするぐらいなら布団を干したほうが場所の有効活用になるのかもしれません。水は比較的容易に確保できるかもしれませんが、日差しが強く、猛暑が続くようだと一日に複数回水を与える必要があるかもしれません。昼休みに家にいったん帰って水あげるよなんて田舎の様な働き方では無いので、またハードルが上がりますね。土はそれこそAmazonでボタンをポチっと押せば次の日に届きますが、処分はどうでしょうか?土は自然物なのでゴミにも出せないし、そこら辺の公園に捨てるのは犯罪です。私の実家のある北海道の片田舎(食料自給率200%越えの)では当たり前のようにできる家庭菜園は都心では様々なハードルを越えないとできない貴重な行ない・体験なのかもしれませんね。
水と土はどこじゃ?
ところで、私は野菜を育てることと長期投資の間には共通点が多いと考えております。最近では新NISAが流行っておりますので、投資初心者の方はYouTubeで著名な方や有名人がこれを買えば大丈夫的な発言を鵜吞みにして投資を始める方も多いようです。何事にも共通することですが、アタマで考えることと実際に体験することには大きな乖離があります。手塩にかけて育てた野菜が長雨や台風でダメになっちゃうことが多々あるように、どんなに素晴らしい銘柄を仕込んでも、想定外の外部ショックで株価が急落することもあります。重要なことは、そこで諦めるか、再度チャレンジできるかでしょう。私が今まで見てきたケースだと、想定外なことが起こり市場全体が大きな調整をむかえた際に、投資をやめてしまう方が一定数います。事前に長期投資の御指南をYouTubeの説明を聞いてわかった気になっていたとしても、パニックは理屈ではありません。リーマンショックやコロナショックをリアルに体験された受益者の方々の多くは『動かざること山の如し』で乗り切る方が多い印象です。
NISAってなんなのさ?
とは言ったものの、『実際にダウンサイドを体験したことないからわかるわけないよ!』と投資に躊躇されている方も多いことと思います。自身に長期投資の適性があるか否かを測るのに、試しに夏野菜を一から育ててみるのはいかがでしょうか?土選び、立地、水やりの頻度、追肥、芽かき、虫との戦い、毎日の天候の確認、長雨・猛暑・台風への備えなど、苗から実際に食べられる野菜までの道のりは意外と長く、予期せぬことも多々起こります。ひょっとしたら最初は失敗してしまうかもしれません。たとえそうであったとしても、諦めない忍耐力と改善を苦とされない方であれば、長期投資も乗り越えられると思う次第でございます。もう夏野菜を植えるには少し遅いので、これからの時期なら秋野菜かもしれませんね。まだ時間があるので、じっくりYouTubeでも観て色々と計画を立てるのが良いでしょう。計画を立てるのも長期投資の素養の一つですからね。最近では金融リテラシーなんてカッコいい響きの言葉だけが先行しておりますが、物事の本質はそう大きくは変わりません。野菜を育てるという生物が生きる上で根源的な体験から学べることは多いでしょう。
いろんな学びがございます。我が家では春先に物価高騰対策として植えたトマト、キュウリ、ピーマンはすくすくと育っており、収穫高も上がってきました。ところがこれらの夏野菜は供給が増える夏になると、需給の関係で市場価格が一気に下がり、設備投資額と毎日の手間暇を考慮したら割に合わないことも学べます。同時に、スーパーに行きカネさえ払えば一年中食べたい野菜を買うことができることの素晴らしさにも気づかせられます。これらはビニールハウスなどの技術、流通・サプライチェーンの高度化無しには実現できません。最近では高い高いと叫ばれている野菜などの食品の本質的な価値は実はも~っと高く、我々はそれを相対的に安い価格で享受できている点も学べるかもしれません。考えてみて下さい、毎日の食卓で食べている野菜を全てタイムリーに自分で栽培するとしたら、どれだけのコストがかかるのでしょうか?仕事や育児、介護で忙しいなんて言っている場合じゃないぐらい時間と手間暇がかかります。第一次産業の方々に感謝ですね~。最後に、もちろん自分で育てたミニトマトは少し酸っぱくても、pricelessな気がするのも重要な学びだと思います。
AI・イノベーションは様々な分野で生産性を向上させるかもしれないが、
日本が直面する課題の根本的な解決策ではない...
【農業就業人口の推移】
出所:農林水産省より、ありがとう投信作成
魚が減ったのか?
貧乏になって魚が買えなくなったのか?
【日本の1人当たり魚介年間消費量と日本の1人当たりGDPランキング】
出所:ありがとうトピックス『サカナを食べるとGDPがよくなる?』より、一部抜粋
飢餓マップで日本にも色がつきました
構造的な円安で食料・穀物輸入も買い負ける?
出所:FAOより、一部抜粋
オクラの花なんて育てたことない人はどんな花かわからないと思います...
勉強になりますね~
出所:39クッキング【オクラは我が家のスーパースター!】より、一部抜粋
39!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
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【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
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