Less is More
さて、今年も残すところあと数日になりました。今年最後のありがとうトピックスということで、年末にふさわしい断捨離系のお話をしてみたいと思います。ところで、受益者の皆様は『Less is More』というフレーズを聞かれたことはございますでしょうか?大体の意味としては『少ない方が豊かである』といった感じで、20世紀に活躍したドイツ出身の建築家が残した言葉として知られているようです。私は数年前にとある完成車メーカーのデザイナーからこの言葉を聞いて、なるほどね~と感心した次第でございます。この言葉のコンセプトは建築やデザインの世界にとどまらず、最近ではデジタル化により効率化を進めるIT業界など、世の中のいたるところに浸透してきたように思います。
私の身近にもいくつかこの言葉を思い浮かべるような出来事がありました。今年の年初ごろの話ですが、テレワークが当たり前の働き方になったので、もともと都会があまり好きではなかったこともあり、東京から地方に引っ越すことにしました。荷造りをしている際のことで...私も妻も東京に来る前は海外の大学に通っていたので、基本的にはスーツケース一つで東京に来たはずだったのですが、十数年間東京に住む間にアホみたいにモノが増えていました。もちろん、結婚や子供ができたことなどモノが増える要因は多々ありましたが、ほぼ使っていないモノもたくさん出てきて、高い家賃払って、必要のない空間を作っていたことに気づかされ、腹立たしくなったものです。妻とヘトヘトになりながらなんとか荷造りを終えて、テレビをつけて一休みしていると、戦国時代の時代劇がやっており、お館様が簡素な部屋で部下を叱責するシーンでした。パワハラはひとまず置いといて、そのシーンを見た妻がガランとした何もない部屋を指さして、『これが理想よ!』と叫びました。あれから約1年、今住んでいる家の中はどうなっているかというと...子供のおもちゃや、特売で大量に買った紙オムツなどがmore and more で一部屋埋まっている具合で、結局これが現実ねといった感じです...
と、しょうもない私の体験談はこのくらいにして...よくよく『Less is More』のコンセプトで物事を考えてみると、最近の世の中は無駄なものが非常に多いような気がします。例えば、完成車メーカーは4年ぐらいでフルモデルチェンジとか言って、短いスパンで車を買わせようとしますし、もっと短いマイナーチェンジなんてのもあります。他には、お土産の過剰包装などは言うまでもないですよね。旅行なんかもGo To トラベル再開で来年からまた増えるのかもしれませんが、そんなに頻繁に旅行しなくても良いのではと感じるようにもなってきました。ビジネストリップも同様ですよね。今年開催された東京オリンピックについても、オリンピックのために作られた各施設の負の遺産化が話題になっています。こんなことは事前からわかっていたことで、一時的な経済効果を得るために、今まで何度も繰り返してきた需要の先取りをして、無駄なお祭りをしただけだと思います。最近流行ってきたBNPL(後払い)についても、結局のところ高価なモノを分割払いさせることにより、消費意欲を向上させる仕組みだと思います。最近よく耳にするSDGsとかESGでは無駄を省き、サステイナブルな世の中にしようと良いことばっかり掲げていますが、現実はそう簡単でもなさそうですね。なんとなくですが、今の世の中は消費意欲を無理やり創出しているような点が多いように改めて感じる次第でございます。
もちろん現代は戦国時代ではないので必要最低限の物資でサバイバルしようぜ!ってことではないので、ある程度のあそびはあって良いと思いますが、持続可能な社会を本気で実現するのであれば、国や企業の姿勢だけではなく、我々の考え方も改める必要があるのでしょう。口で言うのは簡単ですが、カーボンニュートラルなどを目指すということは、今までのビジネスのやり方を変える必要があるので、そこに追加的なコストが発生します。それは企業の利益率を低下させるといった他人ごとだけでは済まず、我々家計の日常生活で必要なモノ・サービスへのコスト転嫁という形での値上げを意味するので、『自然に優しい感じで良いことしたよ』だけじゃすまない世界が今後待っているはずです。
投資家としてこの現象を考えてみると、これからの世の中は人口動態の増加に伴う消費増などの成長に頼った業績の成長だけではなく、限られた資源を有効活用できるようなビジネスモデルへの需要もさらに強くなると考えられます。例えば、今月の厳選投資銘柄紹介ブログで話したHealth Catalystの事業内容も医療現場のコストをDX化により削減し、無駄な医療費を削減するなど社会的な側面でも大きな付加価値を生んでいます。当ファンドが厳選投資している銘柄には、こういったこれからの持続可能な社会に求められるビジネスモデルを有する企業も多くございます。足元のマーケットではボラティリティが大きくなっておりますが、こういった中長期的に必要とされるモノ・サービスを提供できる企業の株は短期的な相場で他につられて売られることがあっても、買い戻されると信じております。受益者の皆様におかれましても、実際の投資先企業のビジネスモデルを知った上で長期投資された方が、安心されると思いますので、ぜひ厳選投資銘柄紹介ブログもご参照いただけますと幸いです。
雑駁になりましたが、今年の大掃除は『Less is More』を頭の隅におきながらやっていただくと、来年からはお館様並みにスッキリした部屋でスタートできるかもしれません。是非ご一考くださいませ。また、最後になりましたが、今年も大変お世話になりました。また来年も何卒よろしくお願い申し上げます!!!
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ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
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