第20期ありがとうファンド運用報告(2023年8月末~2024年9月2日)
さて、ありがとうファンドは9月2日に第20期決算期末を迎えました。今月のありがとうブログでは第20期1年間の振り返りを簡単にさせていただければと思います。報告期間は前期期末の2023年8月末から2024年9月2日までの約1年間になります。また、これから全国6ヵ所で開催する第20期運用報告会では本ブログで解説させていただく内容に加えて、足元の投資環境の整理・今後の運用方針などまで広げて話したいと考えておりますので、是非ご参加いただけますと幸いです。
下図で基準価額の騰落率と推移をみてみましょう。9月2日末時点の1年間の騰落率は18.0%となり、当ファンドの基準価額は2023年10 月頃までは下落基調での推移でしたが、それ以降は上昇に転じ、7月の半ばまではおおむね上昇基調が継続しました。8月に入り『令和のブラックマンデー』と呼ばれるような暴落相場が起こり、当ファンドの基準価額も下落しましたが、期首対比では18.0%のプラスリターンで終えることができました。
【基準価額の騰落率と推移】
出所:ファクトセット等より、ありがとう投信作成。線グラフはありがとうファンドの基準価額2023年8月末時点を1とした期中の推移。
※設定来騰落率については、ありがとうファンド設定日の 2004 年 9 月 1 日からの騰落率になります。
ありがとうファンドは世界の国・地域に分散投資しておりますので、各国・地域別の株価推移も見てみましょう。
前期末から10月末にかけては、米格付け大手による米国債格下げの発表、主要産油国であるサウジアラビアとロシアが原油の供給制限延長を決定したことによる原油高、インフレ上昇懸念の高まり、中東情勢の緊迫化など複数の金利上昇要因が重なり米長期金利が上昇したことから、世界株式市場は下落基調に推移しました。
11月に入ってからは状況が一転し、米国物価指標の伸び鈍化やさえない経済指標の発表を受けて、米長期金利が低下したことなどを背景に、世界株式市場は上昇に転じました。一方、日米金利差縮小から、ドル円相場は円高基調となり、日本株式市場は横ばいで推移しました。
2024年に入ってからも先進国株式市場を中心に上昇基調が継続し、特に前年末にかけてやや出遅れていた日本株式市場の上昇が目立ちました。一方、中国の景気減速懸念の影響から新興国株式市場は低迷しました。
年初から一本調子で上昇していた先進国株式市場でしたが4月に入ると、イスラエルがシリアにあるイラン大使館を爆撃し、その後報復としてイランがイスラエルへの攻撃を実施するなどしたことから中東の更なる混迷が警戒され米国株を中心に世界株式市場は調整しました。
その後市場は落ち着きを取り戻し、弱い米経済指標が発表されるようになってきたことから利下げ期待が強まったことや、NVIDIAなどAI関連銘柄への期待で米国株式市場を中心に上昇トレンドに回帰しました。ただし、6月にはフランスのマクロン大統領が国民議会の解散総選挙に踏み切るなど、欧州政治の先行き不透明感が強まり、米国株、日本株式市場に比べて欧州株式市場の出遅れが目立つようになりました。
7月にはトランプ前大統領が演説中に銃撃され、月後半にはバイデン大統領が選挙戦からの撤退を発表し、ハリス副大統領が当選する見通しも出てきたことから、米国の政治不透明感が強まりました。また年初から市場を支えてきた米大手ハイテク企業の四半期決算発表にて、やや失望的な決算の企業も出てきたことから、警戒感が広がり、調整相場に転じました。
8月初旬には米国のリセッション懸念から米利下げ観測が高まる中、日銀の追加利上げとの金融政策の方向性の違いが意識され、円キャリートレードの巻き起こしが起こったことから、世界株式市場は総じて大きく下落しました。その後は、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長のハト派発言もあり、米国の主要株価指数が最高値を更新するなどし、乱高下する中で当ファンドの決算期末をむかえました。
【マーケットのおさらい】
(現地通貨ベース)
出所:ファクトセット等より、ありがとう投信作成
次に、為替の推移も見てみましょう。対ドル・対ユーロ共にup downの大きな期になりました。7月半ばごろまでは対米ドル、ユーロの両通貨に対して円安が進行したため当ファンドの基準価額上昇を後押しするかたちになりました。しかしその後、米国経済の景況感悪化懸念と日銀の利上げが重なったことから、円キャリートレードの巻き戻しがおこり、急激な円高に転じたため期末時点の為替水準は期首とほぼ同じ水準まで調整しました。
【ドル円とユーロ円のおさらい】
出所:ファクトセット等より、ありがとう投信作成
当ファンドの基準価額は日本円で算出されますので、円ベースでのマーケット推移も見ておきましょう。先ほどの現地通貨ベースの図を円ベースに換算すると以下のような推移になります。期後半の円高の影響を加味しても、なんだかんだ言って米国株式市場の高パフォーマンスが目立ちますね。
【マーケットのおさらい】
(円ベース)
出所:ファクトセット等より、ありがとう投信作成
次に、あくまでも概算値になりますが、それぞれの投資先ファンドの寄与度を下記のスライドでまとめてみました。基本的には計算期間の組入比率の高いファンドほど当ファンドの基準価額への寄与度が高くなる傾向にあります。
当期の主な投資行動としては、期前半に米金利が高止まる環境下において財務状況が不利になりがちな北米の小型株を主な投資対象としているアバディーン・ノースアメリカン・スモーラーカンパニーズを全売却し、より外部環境の変化に対応しうる大型の米国株を主な投資対象とするアリアンツ・US・ラージ・キャップ・バリューへスイッチングしました。期後半では生成AIブームにより特定の大型ハイテク銘柄の株価が大きく上昇していた投資環境にて高パフォーマンスを実現していたアライアンス・バーンスタイン・アメリカン・グロース・ポートフォリオを一部売却し、より広い投資ユニバースを投資対象としているJPモルガンUSセレクト・エクイティやアリアンツ・US・ラージ・キャップ・バリューへスイッチングしました。また、既存の組み入れファンドより信託報酬の低いアライアンス・バーンスタイン・ヨーロピアン・グロース・ポートフォリオへの投資を開始しました。また、期を通して金ETFへの投資を継続しました。
【投資先ファンド寄与度】
(概算値)
【投資先ファンドのパフォーマンス】
(2024年8月末時点)
出所:各種投資先運用会社データ、ファクトセットより、ありがとう投信作成
各国・地域市場ごとに投資先ファンドのパフォーマンスを確認してみましょう。
【日本株式市場】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価・指数は前期末を1として指数化、当期末までの推移。外貨建ての株価・指数はすべて日次で邦貨換算した日本円ベース。
【米国株式市場】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価・指数は前期末を1として指数化、当期末までの推移。外貨建ての株価・指数はすべて日次で邦貨換算した日本円ベース。アバディーン北米小型ファンドは期中に全売却しました。
【欧州株式市場】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価・指数は前期末を1として指数化、当期末までの推移。外貨建ての株価・指数はすべて日次で邦貨換算した日本円ベース。アライアンス・バーンスタイン・ヨーロピアン・グロース・ポートフォリオは2024年2月27日に設定されたため、それ以前の基準価額は同様の戦略であるアリアンツ・ヨーロッパ・エクイティ・グロース・セレクトの基準価額を参照して指数化
【新興国株式市場】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価・指数は前期末を1として指数化、当期末までの推移。外貨建ての株価・指数はすべて日次で邦貨換算した日本円ベース。
【世界株式市場】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価・指数は前期末を1として指数化、当期末までの推移。外貨建ての株価・指数はすべて日次で邦貨換算した日本円ベース。アリアンツ・グローバル・エクイティ・グロースファンドは期中に全売却しました。
【金ETF】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。株価・指数は前期末を1として指数化、当期末までの推移。外貨建ての株価・指数はすべて日次で邦貨換算した日本円ベース。
最後に・・・
当期の世界株式市場はおおむね上昇する1年になりましたが、期の終盤には『令和のブラックマンデー』と呼ばれるぐらい大きく下落した相場展開もみられました。最近では今まで上昇相場を牽引し続けてきた生成AI関連銘柄から他の銘柄への物色の変化がみられはじめました。日本株式市場でも円安から円高トレンドへ転じたことにより、物色動向にも変化がみられています。今年は年初から世界各地で選挙があり、年後半には米国の大統領選挙も控えています。政治的にも転換点なのかもしれません。ひょっとしたら、今我々は相場の大きな転換点にいるのかもしれません。今後どんな相場展開になるかは誰にもわからないので、不安になる時もあるかと思いますが、『市場に居続ける』ことの重要性だけは忘れずに、長期投資にお付き合いいただけますと幸いです。
以上、簡単ではございますが第20期運用報告とさせていただきます。
39!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
◆記載内容について: 資料に記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
◆株価指数について:記載されている各国・地域市場の指数は特別注記が無い場合は以下の指数を使用しています。
【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
関連記事
| 運用トピックスTOPへもどる |