<FPコラム>老後のお金シリーズ~公的年金の繰上げ・繰下げ受給について(前編)
皆さん、こんにちは。新型コロナウイルスの感染拡大が世界中に広がり、様々なところに影響が出ていますが、いかがお過ごしでしょうか?、
桜が開花して春めいてきましたが、東京五輪も来年に延期になり、外出自粛要請も出て、今年はお花見気分ではないですね。
さて、今回のFPコラムは老後のお金シリーズとして、公的年金の繰上げ・繰下げ受給について取り上げたいと思います。
皆さんはありがとうファンドを利用して老後の資産形成や資産運用をされていると思いますが、これは自助努力による資産形成・自分年金作りです。その一方で、私たちは公的年金に加入して年金保険料を支払う義務があります。
公的年金については、昨年老後2000万円問題で話題になったり、過去に消えた年金問題で社会問題になったり、少子高齢化と人口減少による負担と受給のバランス悪化によって将来の年金受給額が減るのではないかと言われていますが、公的年金は私たちにとって終身で受け取れる老後の大切な収入のベースであることには変わりありません。そのため、老後に向けた資産形成や老後の生活設計を考えていく上で、公的年金についてきちんと理解していくことはとても重要なことです。
公的年金は、すべての国民が入る1階部分の国民年金と会社員や公務員が入る2階部分の厚生年金保険の2階建ての構成になっております。(さらに私的年金として企業年金等の3階部分があります)
出所:厚生労働省ホームページより
年金受給開始年齢は、生年月日が男性は1961年4月2日以降、女性は1966年4月2日以降の方は原則65歳からで、生きている限り終身で年金を受け取ることができますが、年金を繰上げ・繰下げ受給することで60歳から70歳の間で自由に年金受給開始時期を選択することができます。
繰上げ受給をする場合は、1ヶ月あたり0.5%減額されて60歳から受給を開始することができます。60歳から受給する場合は0.5%×60ヶ月=30%減額された年金額を終身で受給していくことになります。
一方、繰下げ受給をする場合は、1ヶ月あたり0.7%増額されて70歳まで繰り下げすることができます。70歳から受給する場合は0.7%×60ヶ月=42%増額された年金額を終身で受給していくことになります。
例えば、65歳から200万円の公的年金を受給できる人が60歳から繰上げ受給した場合は30%減額されるので、200万円×70%=140万円になり、70歳から繰下げ受給した場合は42%増額されるので、200万円×142%=284万円になります。
また、現在国会に提出されている年金改正案では75歳まで繰り下げができるようになる改正が盛り込まれています。75歳まで繰り下げる場合は、0.7%×120ヶ月=84%増額された年金額を終身で受け取れることになります。
出所:厚生労働省HP、2019年10月18日厚生労働省年金部局「繰下げ受給の柔軟化」より
この繰上げ・繰下げ受給ですが、どちらが得か損かという議論がありますが、制度設計としては、繰上げによる減額率、繰下げによる増額率については、選択された受給開始時期にかかわらず年金財政上中立となるように設定されています。つまり、平均寿命よりも長く生きる人、短く生きる人がいるので全体でみて平均的な死亡年齢、平均的な受給期間で考えれば、損得がないように設定されています。
実際に繰上げ・繰下げした場合の損益分岐年齢は何歳かというと繰上げした場合は、60から繰上げした場合は76歳まで生きると65歳から受給した場合と受取額が逆転し、70歳まで繰下げ受給した場合は81歳まで生きると受取額が逆転します。ただし、繰下げして年金額が増額された場合は税金や社会保険料の負担も増加するので、手取りベースだと住んでいる地域によって異なりますが87歳くらいになると言われています。つまり、87歳以上長生きした場合は、繰下げ受給した方がトータルで受給額増えるのでお得ということです。
人生100年時代と言われるように、高齢者の平均余命が伸びていく中で、自分が平均よりもかなり長生きするのであれば、繰下げした方が繰上げした場合や繰下げしなかった場合と比べれば、トータルの受給額が増えてお得なことは確かです。
専門家の方々も、繰下げ受給には、加給年金が繰下げ期間中は受け取れなかったり、遺族厚生年金は増えないといったデメリットや注意点もありますが、繰下げ受給を勧める方がほとんどです。一方でメリットがあまりなくデメリットの方が多い繰上げ受給を勧める方はほとんどいません。
(後編に続く)
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