【新NISA解説シリーズ】第3回 『新NISA開始で現行NISAはどうなる?』
現行NISAで資産運用している方にとっては、現行NISAとの兼ね合いはどうなるのか、非課税期間が終了したあとのロールオーバー(非課税期間を延長すること)はどうなるのか、といった部分が気になるのではないでしょうか。
新NISAを活用するにあたって、現行NISAとの関係・注意点をお伝えしていきます。
現行NISAからの新NISAへは移せない
新NISAが2024年からスタートするにあたり、現行のNISAは2023年末で買付終了となります。そして、新NISAでは新旧分離、つまり現行NISAとは別制度として扱われます。そのためこれまで現行NISA口座(つみたてNISA・一般NISA)で購入してきた商品を、新NISAに移す(ロールオーバー)ことはできません。
一般NISA・つみたてNISAともに非課税期間終了までは引続き運用(保有)可能です。非課税期間終了前に売却すれば非課税になりますが、売却しない場合は非課税期間(一般NISA5年、つみたてNISA20年)終了後に課税口座に時価で移されます。このとき、非課税期間に運用で得た利益に対して課税されることはありません。
制度ごとにもう少し詳しくみていきましょう。
つみたてNISAを利用いている場合
つみたてNISAにはもともとロールオーバーというしくみはありません。投資した年を含む20年(非課税期間)が経過したところで課税口座に時価で払い出されます。
例えば2018年につみたてNISAで積立をした場合、2037年末まではそのまま非課税で運用を続けられます。売却せずに保有するとその後は課税口座に払い出され、2038年以降は課税口座での運用になります。その後も2023年購入分まで順次払い出されます。
一般NISAを利用している場合
今までは、5年の非課税期間終了時に、手続きをしないと時価で課税口座に払い出されますが、手続きを行い、新たな一般NISAの投資枠にロールオーバーするとさらに5年非課税で運用を続けることも可能でした。
しかし、前述したとおり新NISAにはロールオーバーすることはできません。2019年以降に購入した分は非課税期間が終了すると自動的に課税口座に時価で払い出されることになります。
現行NISAを利用している場合の選択肢
主な選択肢は以下の2つになります。
①非課税保有期間が終わるまで運用を続ける
2024年に新NISAが始まった後も、一般NISAは最長2027年まで、つみたてNISAは最長2042年まで非課税で運用が可能です。
現行NISAの非課税枠を利用していたとしても新NISAの非課税枠とは別枠のため、生涯投資枠1800万円(うち成長投資枠は最大1,200万円まで)は満額利用できます。新NISAが始まったからといって現行NISAの資産をあわてて売却する必要はありません。
②売却して新NISAの運用資金に充てる
手持ちの資金に余裕がないのであれば現行NISAを売却して、その売却金を新NISAの運用に充てるということも一つの選択肢です。
ただし、購入したときよりも時価が値下がりしているときに売却するのはおすすめできません。非課税期間が残っているのであれば、値上がりして含み益が発生するまで待ってから売却するとよいでしょう。
値下がりした場合、税金を多く払うことも
保有資産が値下がりしているときに非課税期間が終了し、課税口座に払い出されると値下がりしたその金額が取得価格になってしまいます。
たとえば、購入時に40万円だった投資信託が20万円に値下がりしたとします。これを非課税期間が終了し、課税口座に払い出されると、課税口座での取得価格は「20万円」となってしまうのです。その後、40万円に値上がりした時点で売却すると、20万円(40万円-20万円)の利益が出たとみなされてしまい、税金がかかってしまうのです。
特に一般NISAの場合、非課税期間が5年と短く、値動きの大きい商品に投資していると、値下がりしたまま非課税期間が終わることもありえます。含み益がある分には問題ないのですが、含み損があると税金を多く払う場合があるということを押さえておきましょう。
2024年以降、新NISAへ移管(ロールオーバー)できなくなることを考えると、運用の状況や手持ちの資金なども踏まえて、現行NISAの出口戦略を慎重に検討することが大切になってきます。詳しくは現行NISA口座をお持ちの金融機関にご相談ください。
次回は新しいNISAについての疑問をQ&A形式で解説していきます。
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