【今月のFP情報コラム】万が一に備えて、今からできる相続の準備(2025年3月)
「自分に万が一のことがあったときのために準備しておきたい」と思っていても、どこから、何をすれば...とその具体的な内容や進め方についてわからないという方が多いと思います。相続準備や終活は遺された家族や周囲の人に苦労をかけないことも目的のひとつですが、それだけでなく今後の人生をより充実させるための大切な活動でもあります。
「相続・終活」と聞くとリタイア後に始めるイメージかもしれませんが、早くから準備することで、自身の現状を把握でき、将来の目標や課題が明確化できるというメリットもあります。今回は、すぐにできる準備のポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
必要なものと不要なものを分別して整理する
身の回りの整理は想像以上に体力、気力、判断力が必要になります。元気なうちから計画的に取り組むとよいでしょう。不要なものを処分して必要なものだけを残せば、後々、遺品整理を行う際の家族の負担を軽減できます。衣類や日用品などモノの整理の他に財産と情報の整理も重要になってきます。
◆ 利用していない金融機関の口座やクレジットカードは解約する
金融機関口座は、金融機関が名義人の死亡を知った時点で凍結され、引き出しなどの取引が一切できなくなってしまいます。残された家族が凍結の解除や口座解約の手続きをするには、必要書類を用意して窓口で行うためとても手間がかかります。クレジットカードは、解約手続きをしない限り請求が続くため、引き落としの銀行口座が凍結されてしまった場合、未払い状態になってしまいます。残高が少ない銀行口座や使っていないクレジットカードは解約をしておくとよいでしょう。口座やクレジットカードを整理することでご自身も管理しやすくなります。
◆PCやスマートフォン、ネット上の情報「デジタル資産」を整理する
デジタル資産とはデジタル形式で保管された財産のことで、具体的には、パソコンやスマートフォンに保存された電話帳、写真や画像、文書データなどの「オフラインのデジタル資産」と、SNS、メール、通販サイトのアカウント、ネット銀行やオンライン取引の証券口座、インターネット上で契約したサブスクリプションサービスなどの「オンラインのデジタル資産」の2種類に分類することができます。
パソコンやスマートフォンなどデジタル機器を確認し、オフライン・オンライン両方のデジタル資産で「残すもの」と「処分するもの」に整理します。保存された写真や画像、連絡先などは、残したいものだけを選び、不要なデータは削除します。不要なアカウントや使っていないオンラインサービスは早めに解約の手続きを行いましょう。特に、見放題、読み放題などのサブスクリプションサービスは、契約者が自ら解約しない限り、契約が自動更新されることが多く、亡くなった後も料金が引き落とされ続ける可能性があるため注意が必要です。
ご家族が契約に気づかなかった場合、利用していない間も料金がかかってしまう恐れがあります。利用中のサービスは契約内容をまとめて家族と共有しておくと亡くなった後の解約手続きがスムーズに行えます。
デジタル資産についてはこちら
「資産・財産リスト」を作成する
整理した資産や財産を一覧表にまとめます。ご自身の財産で「なにが」、「どこに」、「どれくらい」あるのかを把握することで、老後資金の試算と財産の残し方を整理して考えることができます。財産をどう分けられるか、相続税はかかりそうか、遺言書をつくっておいた方がよいかなど具体的な課題がみえ、相続に関する対策・計画に活用することができます。
リストには預貯金(口座番号・暗証番号)や株式、債券、不動産、美術品などのプラスの財産はもちろん、ローンやクレジットなどのマイナスの財産や残っている住宅ローンについても明記する必要があります。リストは一度作成すれば終わりではなく、環境の変化に応じて、随時アップデートしていきましょう。また、保険証書や印鑑、契約書、不動産の権利書、通帳など貴重品や重要な書類は一か所にまとめておくことが望ましいです。
◆「資産・財産リスト」がなかったら...
リストによって所有する財産が明確になれば、残された家族が財産を調査する手間や労力が減り、トラブルも防げるため、相続手続きがスムーズに進められるでしょう。記載されている各財産に対してどれほどの相続税がかかるのかという試算もできます。
◆デジタル資産の情報もリストに載せる
社会の急速なデジタル化によりパソコンやスマートフォンを使わなければアクセスできない情報も増えています。パスワードがわからないと本人以外がパソコンやスマートフォンのロックを解除することは非常に困難です。
また、SNSアカウント、ネット銀行やオンライン取引の証券口座、インターネット上で契約したサブスクリプションサービスなどもID、パスワードの手がかりがないと本人以外が資産や契約内容を把握することが難しく、解約ができないという問題も生じます。そこで、リストに以下の情報も残して家族に知らせておくとよいでしょう。
ただし、ログインIDやパスワードといった個人情報はそのまま記載してしまうと、情報漏えいのリスクが高まるので注意が必要です。
・パソコンやスマートフォンのログインID、パスワード
・ネット銀行やネット証券の口座情報
・利用しているWebサービスの名前やURL
・利用しているアプリのアカウント名
財産をどのように相続させるか書いておく
リストができたら、財産の分配について考えやすくなります。誰にどの財産をどれくらい引き継いでもらうかといった希望を遺言書やエンディングノートに書いておきます。エンディングノートには法的効力がないため、遺産分割などについてご自身の意思を確実に反映したいなら遺言書を作成することをおすすめします。
特に子供がいない場合や法定相続人以外に相続させたい場合は、遺言書を残しておくとよいでしょう。また、財産金額の大半を自宅が占めている場合、複数の相続人の間で遺産分割をめぐって争いに発展してしまう可能性があります。遺言書があればそのようなトラブルを回避しやすくなります。遺言書にはいくつか種類があり、それぞれ決まった形式で書く必要があります。せっかく書いても不備があると無効になってしまいます。有効な遺言書を作成するためにも専門家に相談、依頼すると安心でしょう。
その他、大きな病気や認知症になったときに、どのような医療を受けたいか、延命治療を望むか、葬儀についての希望などもエンディングノートなどに記しておけば、家族が判断する指針になるでしょう。
もしものことがあった場合を想定して準備をすることは、ネガティブに考えがちですが、今までの生き方を振り返り、これからの人生について深く考え、充実させていく作業でもあります。「病気やけがで長期入院になったら...」「事故で命を落としたら...」という自身の将来に対する不安を払拭できるだけではなく、家族が行う遺品整理の負担や相続争いの可能性を減らせます。
そして、準備は一人ではなく、家族などの身近な人と準備内容を共有し、相談しながら一緒に行うことが大切です。特に遺言書を作成する場合、遺産分割については家族の意見も聞いておくことで、後のトラブルを回避できることがあります。
紹介した内容を参考に少しずつ準備を始めてみてはいかがでしょうか。「ありがとう投信のレポートで読んだけど...」とご家族で話すきっかけにしていただければ幸いです。
<本件に関するお問合せ>
ありがとう投信株式会社 カスタマーサービス部
フリーコール:0800-888-3900
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