米国経済はいつまで堅調なの?(前編)
さて、先月末からありがとうファンドの半期運用報告会を全国で開催させていただいていますが、半年間の運用報告はもちろん、今後の各国・地域別での市場見通しも解説させていただいております。
例えば日本株式市場については、①日本銀行の日本株ETF年間6兆円規模購入の市場下支え効果、②副作用の影響について過去の公的機関による株式購入をケーススタディとして説明させていただいております。
また米国経済については、リーマン・ショック以降10年間経済の回復・改善が続いているのは皆様ご存知の事と思います。流石に長すぎるのでは?と質問をいただくことも多かったので、過去の金利動向などを基に景気後退シグナルの考え方を説明させていただいております。今回のありがとうトピックスではこの点を共有させていただきます。
まずは図1を見てください。
米国経済の約7割は個人消費で支えられていることが確認いただけると思います。個人消費の増加が企業利益の拡大につながりやすい構造と言えるでしょう。
同時に図2を見ていただくと、リーマン・ショックで経済が落ち込んだ2008年以降、大規模な金融緩和の助けもあり失業率はリーマン・ショック以前の水準以上まで改善し、可処分所得の増加ペースも回復・改善してきました。多くの人が働き、可処分所得も増加する環境下では自然と個人消費が堅調なのもうなずけると思います。このような感じでリーマン・ショック以降約10年に渡り特に大きな景気後退局面を迎えず堅調な米国経済が続いていると考えています。
では、本題の「次の景気後退局面はいつ?」についてですが、過去の例をみると長短金利の逆転が一つのシグナルになるのではと考えております。
図1:個人消費が米国経済を支える
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成、データは2017年12月末時点
図2:失業率は低位、可処分所得も多い→個人消費は増加
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
図3の赤い線は米10年国債金利を長期金利として、その金利から米政策金利を短期金利として引いた推移を表しています。左軸で0%より下に赤い線があるという事は、長期金利より短期金利の方が高かった事を意味します。ピンクで薄く影のかかった部分で景気後退局面を表していますが、その手前にはこういった現象がみられていました。普通の感覚でいうと、長期の金利より短期の金利が高くなるわけないじゃんと感じると思います。これは近い将来の経済に対する期待が遠い将来の期待より相対的に強くなるため起こります。
つまり、直近の景気感がすごく良いという事を意味するのです。それではなぜ足元こんなに景気感が良いのでしょうか?様々理由があると考えられますが、やはりリーマン・ショックから立ち直るための金融緩和によって短期金利である政策金利の水準が長い間低位に抑えられていたことが大きいと考えます。
政策金利が低くなれば長期金利も同様低位の水準にとどまり、金利が低い分企業の融資需要も増え、経済活動が活発化します。ただあまり過熱しすぎもよろしくないので、2015年以降は政策金利を徐々に利上げしている状況です(図4参照)。利上げをするためには経済が堅調なことを確認しないといけませんので、図1に示したような失業率の水準、賃金の増加水準などを基に、利上げ可能かを判断しているのです。
2月の初めに大きく株式市場は値を下げましたが、これも米国の1月雇用統計発表が市場予想より強かったため、政策金利の利上げペースが上がり、近く短期金利が長期金利より高くなるのではといった懸念が強まったためと考えます。しかしながら、図3の赤い線を見る限りでは、0%を下ぶれるまではまだ余裕があるように見えます。これだけではまだ「次のいつ?」はわかりません。
図3:短期金利と長期金利が逆転すると景気後退が意識されるシグナル?
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
図4:米国経済は堅調→利上げ(引き締め)ができる
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
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