ありがとうの本棚(今月の一冊『「教える」ということ』)
「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには
(角川新書) 新書 - 2024/8/9
出口 治明 (著)
「どう教えたらよいだろう」と...教師や上司でなくても「教えること」に悩んだ経験はだれにでもあるのではないでしょうか。そんな難問のヒントを見つけられる一冊を紹介します。
本書はライフネット生命の創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学の元学長である著者が、ビジネス及び教育の現場という2つの経験を通して「教えること」の本質を説いています。本書では、「教える」ということは腹落ちしてもらうことであり、教える立場に立つのなら相手のレベルに応じて、相手がわかりやすく話す(書く)ことが絶対条件になっています。そのうえで、何をどのように教えればよいかわかりやすく書かれています。
著者は、教育基本法で定められている教育の目的を「自分の頭で考える力を養う」「社会の中で生きていくための最低限の知識(武器)を与える」の2つだと解釈します。
1つ目の「考える力」を養うには、物事をフラットに、正確に見極めて考える必要があるため、「タテ(歴史的)・ヨコ(グローバル)・算数(データ)」という3つの視点から物事を見る方法を提唱しています。2つ目の最低限の武器とは、「国家・政府・選挙・税金・社会保障・お金・情報の真意」のことで、大人になって社会で戦うときに困らないように、この7つの基礎的な知識(原理原則)を教えるということです。それらについて海外との教え方の違いやデータに基づきながらひとつずつ解説されています。
そして重要なのは、そうした教育が「尖った人を生み出す教育」であり、これから日本が成長していくためには「尖った人」たちが必要であるということです。
その他にも勉強をする理由、伝わりやすい話し方、ピアラーニングの効用、社会人教育など、「教える」を入口に、社会を生き抜く知恵について説いていて、著者の考えや思いが詰まっています。堅苦しい教育論はなく、非常に読みやすい内容になっていて、"腹落ちする"ことばかりです。教える立場の方にはもちろん、「学ぶこと」についても考え直すきっかけになります。「なんで勉強しなくちゃならないの」と思っている学生さんにもお勧めです。
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