ありがとうの本棚(今月の一冊『脱税の世界史』)
脱税の世界史 (宝島SUGOI文庫) 文庫 - 2024/2/6
大村 大次郎 (著)
確定申告シーズンの今月ご紹介するのは脱税の歴史に関する本です。著者は元国税調査官で、本書では「脱税」を通じて世界史をたどっていくというテーマをもって描かれています。
国家というものは税金でつくられていて、税金が徴収されて初めて国家は成り立ちます。歴史上「税金のない国」というのは存在したためしがないと言われており、古今東西の国家は必ずなんらかの税金をとっているとのことです。
そして、国の隆盛には必ずと言っていいほど税金が絡んでいて、世界史に登場する強国、大国というのはどこも優れた税制を持っていたそうです。
武装蜂起、革命、国家分裂、国家崩壊などには必ずと言っていいほど、「脱税」と「税システムの機能不全」が絡んでいるそうです。
富裕層や特権階級はうまく税を逃れ、そのしわよせが庶民に襲い掛かる、貧富の差が拡大し民の生活は苦しくなり国力が減退する、そして他国から侵攻されたり国が崩壊したりするのが世界史に登場する強国、大国が衰退するときのだいたいのパターンだそうです。つまり、富裕層からきちんと税金を取れなくなったときに国は滅びるのだそうです。
脱税の横行で国家が崩壊したローマ帝国の話や大航海時代は関税を逃れるために始まった話など歴史を動かした事件の裏には、教科書には載っていない「脱税」問題が介在していたことが描かれていてとても興味深い内容になっています。
日本の現状を鑑みると非常に示唆に富んだ考えさせられる一冊ですので、ご興味のある方は是非ご一読頂ければと思います。
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