【今月のFP情報コラム】夫婦で行う住宅ローン「ペアローン」 知っておきたいメリット・デメリット(2023年10月)
都市エリアを中心に不動産価格が高騰している影響で、住宅ローンの借入金額が大きくなる傾向にあり、1人分の収入で住宅ローンを利用しようとしても借入金額が不足し、「ペアローン」を組まないと購入が難しいケースが多くなってきています。
共働き世帯の増加を背景にペアローンの利用が注目されています。
ペアローンとは
ペアローンとは、1つの物件に対して夫婦それぞれが自身の収入に応じた住宅ローンを契約し、計2本のローンを組む方法です。
契約の形 |
夫婦それぞれで借りる。互いの契約の連帯保証人になる。 |
契約書 |
契約は2つ |
金利タイプなど借入条件 |
契約ごとに選択できる。 |
返済義務 |
それぞれ個別に返済義務あり |
所有権(住宅の持ち分) |
共有名義(それぞれに持ち分あり) |
住宅ローン控除 |
2人分利用可能 |
団体信用保険 |
それぞれ加入 |
諸費用 |
2人分かかる |
ペアローンのメリットとは?
ペアローンの最大のメリットは借入可能額を大きくできるという点です。1人の収入だけでは希望する額が借入られない場合でも、ペアローンを利用することで希望額の融資を受けられる可能性が高くなります。予算が増えると購入できる物件の選択肢が増え、理想のマイホームがみつけやすくなるでしょう。
また、夫婦でローンを2本組む関係上、2人とも団信(団体信用保険)に加入可能です。団信に加入すると、夫婦のうち一方が亡くなったとしてもその方の残債は保険で完済されるため、亡くなった方のローンは返済する必要がなくなります。
メリットとしては他に、ローン残高に応じて一定額を所得税と住民税から控除できる住宅ローン控除が夫婦2人分適用されるため、単独で住宅ローンを借入れるときよりも節税できる可能性があります。
ペアローンのデメリットとは?
ペアローンでは夫婦それぞれ団信に加入できるという点がメリットになっていますが、団信でカバーされるのは夫もしくは妻の住宅ローン残債分のみとなります。仮に夫が住宅ローン返済中に死亡したとしても、夫側の住宅ローンの返済義務しか免除されず、妻側の住宅ローンは残ります。どちらかが死亡したときには、世帯収入が減る上に住宅ローンの返済義務も完全にはなくならず、家計の収支バランスが崩れてしまう恐れがあります。
さらに、ローンを2本組むことになるため、登記費用や司法書士への報酬、印紙代などの費用が2倍になります。ペアローンを借りる際には、単独での住宅ローンよりも多くかかる諸費用以上に、金利などの借入条件や借入可能額にメリットがあるのかを確認しましょう。
また、どちらかの退職や転職、産休や育休などによって収入が減少しても、減少前の収入をベースに組んだローン返済は変わらずに続きます。特に、妻が妊娠・出産・子育てなどで仕事を辞めた場合、妻は所得が無くなるので所得税もなくなります。所得税がなくなると控除額もなくなるため、妻が借りていた住宅ローンに対する控除が受けられなくなります。妻の分のローンを夫や親族が返済すると、贈与税の課税対象になる場合があるので注意が必要です。
離婚時にトラブルのもとになる
夫婦2人によるペアローンで一番厄介なのが離婚トラブルです。
婚姻中に組んだペアローンは離婚後も残り、住宅ローンの返済を継続しなければなりません。また、離婚後もお互い連帯保証人という関係が継続するため、離婚後に相手が住宅ローンの返済を滞らせた場合、自分のローン返済に加えて相手のローン返済もしなければなりません。
売却する場合、ペアローンを組んで購入した家は夫婦の共有名義となるため、互いの同意がなければ売却できません。売却代金でローンの全額を返済できれば問題ありませんが、売却代金だけで全額弁済できない場合は、基本的には売却が難しくなります。
また、夫婦のどちらかが住み続ける場合、共有名義から単独名義にし、残債をすべて名義人のローンに1本化する必要があります。ローンを借り換えるには改めて金融機関の審査を受けなければならず、2本分の住宅ローンを無理なく返済できる経済力を有していないかぎり、基本的には住宅ローンを借り換えて名義を一本化するのはかなり難しいでしょう。
離婚してしまった場合は、ペアローンがその後の生活の大きな足かせとなりかねないので注意しましょう。
住宅購入時は、希望の住宅を手に入れることやローン審査を通すことに意識が向きやすくなってしまいます。
しかし、ローンの返済期間は長期に渡るためライフスタイルの変化などによっては、収入に対して借入金額が過大になってしまう可能性があります。借入る際はデメリットも理解したうえで、長期的な視点で考え、無理なく返済できる範囲かどうか、慎重に判断するようにしましょう。
なお、当社が提供している「FPサービス」では住宅資金についてもご相談いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。
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