【今月のFP情報コラム】相続税改正に伴う生前贈与について(2023年2月)
昨年の令和5年税制改正大綱にて相続税の大改正が65年ぶりに行われることになりました。今月のFPコラムでは生前贈与の主な2つの改正点について見ていきたいと思います。
まず一つ目の大きな改正点としては、現行の暦年課税制度では「死亡前3年以内」の生前贈与については相続財産に含める必要がありますが、改正後は「死亡前7年以内」の生前贈与について相続財産に含めるように変更されることになりました。また、これに合わせて相続4~7年前の贈与のうち合計100万円の控除も新設されました。
4年間分の生前贈与が相続財産に含まれることによって、生前贈与による節税術が大幅に制限されてしまうことになりますので、実質的な相続税の大幅増税であり影響は大きいと言われています。
例えば、暦年贈与の非課税枠(基礎控除)110万円を利用して、子供に毎年110万円ずつ生前贈与していた場合、今までは7年前から4年前までの4年間に生前贈与した合計440万円分の相続財産を減らすことが出来ましたが、改正後は440万円から100万円控除した340万円分が相続財産に含まれることになります。
もう一つの改正点としては、相続時精算課税制度が改正されて今までよりも使い勝手が向上することです。
生前贈与する際には暦年課税と相続時精算課税のどちらかを選択するのですが、現状の相続時精算課税制度は2500万円までの生前贈与には贈与税はかかりませんが、相続発生時には、相続財産に生前贈与分を加算して相続税を計算します。
暦年贈与と違って生前贈与によって相続財産を減らす節税効果はありませんので、利用する人が将来値上がりする予定の資産(株式や土地等)を持っている一部の富裕層などに限られていました。
今回の改正では、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されて、基礎控除された贈与分は申告しなくてもよく相続財産に加算しなくてもよくなりました。
例えば子供に毎年110万円非課税枠で贈与していく場合は、相続時精算課税制度の方が死亡前7年以内の生前贈与分の相続財産への加算がないため暦年贈与よりも節税効果があると言えます。一方で、非課税枠を超えてある程度の金額を長期間で生前贈与していく場合は暦年課税の方が相続時精算課税よりも有利になるケースがあると考えられますが、どちらがよいかはケースバイケースで贈与額や資産額、子供が何人いるかなどで変わってきます。
今回の改正は来年2024年1月から適用されることになります。改正前ルールでの駆け込み生前贈与をお考えの方には今年1年猶予があることになりますので、相続税対策として生前贈与について相続専門の税理士に一度ご相談されてみてもよいかもしれません。
尚、令和5年度税制改正大綱の内容については、財務省ホームページをご覧頂ければと思います。
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