日銀の日本株ETF購入の副作用(前編)
さて、今月も引き続きありがとうファンドの半期運用報告会で説明した『日銀の日本株ETF購入の副作用』について、簡単に説明させていただきます。
副作用を語る前に、日銀はそもそもどのような金融緩和をしているか復習してみましょう。
① 日本国債を年50兆~80兆円規模で買い続けています。
下記の図を見ていただくとわかるように、2013年4月から始まった異次元緩和により、日銀による日本国債の保有割合は足元40%(2018年2月末)まで上昇しています。お札を刷ることのできる一国の中央銀行が、その国の借金の半分近くを保有している状況は今までほとんどないと聞いております。金融政策の継続性が問われるのも当たり前の事でしょう。このように日本国債を買うことによって株式市場にとっていくつかポジティブな効果がありました。代表的なものでは、円安にできたという点です。様々な解釈がありますが、分かり易く簡単に説明してみます。日銀が日本国債を買う際に日銀が銀行券(お札)を発行して購入するため、世の中にある様々な通貨の中で相対的に日本円が増えます。多くあるものの一つ当たりの価値は下がっていくので、基本的には円安になるという仕組みでした。ただし年50兆~80兆円という膨大な規模で緩和をいつまでも続けることはできないので、緩和からの出口が議論されており、最近では緩和をしているから円安というよりは、緩和を続けられそうもないから円高という度合いが強くなっているように見受けられます。
●日銀は日本国債を買い続ける→円安誘導だったが、もう効果よりも副作用が注目される→FRB(米国の中央銀行)、ECB(ヨーロッパの中央銀行)は既に出口へ・・・
出所:ファクトセット、ありがとう投信計算(概算値)・作成
② マイナス金利も採用しました。
2016年1月にマイナス金利政策の導入を決定しました。日本国債買付けの効果があまり出てこなくなったので、ただでも低い金利をさらにマイナス圏にすることで、金融緩和の効果を継続させようとしたのでしょう。しかしながら、金利低下はお金の貸し借りを主とする銀行業などにとっては、利ざやが稼げなくなることを意味するので、銀行業の業績悪化など副作用が目立つようになりました。
出所:ファクトセット、ありがとう投信作成
③ 日本株ETF(Exchange Traded Funds: 上場投資信託)を年6兆円規模で買い続けています。
日本株のETF購入は結構歴史が長くて、2010年12月から始まっています。当初は年4,500億円規模の購入で始まった政策でしたが、下記のグラフを見ていただいてもお分かりいただけるように、どんどん増えていき、現時点では年6兆円規模での購入になっています。この金融緩和の効果は上記の2例に比べると非常に分かり易く、日本株ETF(上場投資信託)を買付けることによって日本株市場を下支えする効果があると考えられています。ただし、この政策も日本株ETFの約72%が日銀保有になるなど継続性が疑問視されていますし、他主要国ではこういった直接株式市場を下支えする政策は禁じ手と考えられているため、外国人投資家からも毛嫌いされていると聞いています。
●日銀は日本株も買い続ける。基本日本株式市場が下げた日に買い入れるので、累積の評価益は大きい。ある意味究極の積立投資と言えるだろう。しかし、買った分をどのように売却するのだろうか?
出所:ファクトセットよりありがとう投信計算、評価益はありがとう投信推計値、2017年12月末までの推移
●ドル円との相関が低くなったと言われているが、日銀が買い支え効果もあるのでは?
外需頼り(為替頼り)の構造は変わらない。→いつまで買い続けられるのか?
出所:日本銀行ホームページ、ファクトセットよりありがとう投信計算、2018年2 月末までの推移
④ J-REIT(上場不動産投資信託)も買い続けています。
とにかく何でも買うのが好きな方々です。弊社の試算では足元約4%(2018年2月末)程度の保有割合になっています。
出所:日本銀行ホームページ、ファクトセットよりありがとう投信計算、2018年2月末までの推移
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
関連記事
| 運用トピックスTOPへもどる |