新興国の成長ドライバーとは?<月次レポート2018年2月より>
さて、1月から全国で開催しています『厳選ファンド徹底紹介セミナー』にて今後の新興国市場投資の考え方を実際に投資している個別銘柄の成長ドライバーを基に説明させていただいております。今回の月次運用レポートでも少し紹介させていただきます。
まず、皆さん新興国の主要な産業といったらどのような産業を思い浮かべるでしょうか?鉱山採掘、油田など資源関連の産業がまっさきに頭に浮かぶ方も多いと思います。確かに、リーマン・ショック前のBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国の頭文字)と呼ばれた新興国は資源保有国もしくはそういった資源を加工する世界の工場として活躍していた国々でした。よって、資源価格の上昇と共にそういった国々の株価も上昇していました。それでは、最近の新興国株の上昇も同様に資源価格によって牽引されているのでしょうか?ありがとうファンドが投資している新興国ファンドでは、今後新興国の成長ドライバーは別にあると考えています。今日はその成長ドライバーを簡単に説明させていただきます。
●図1:新興国における中間所得層・富裕層の台頭
過去の分析と現在の予想は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。予想は今後変更される可能性があります。
*世帯可処分所得別の家計人口。各所得層の家計比率×人口で算出。2015年、2020年は予想。
**国際通貨基金(IMF)が定義する先進国/新興国を構成する国々のうち、データ取得可能な国を対象に、2015年(もしくは取り得る最新)の家計最終消費(対GDP比)と、各国GDP(含むIMF予想)を用いて概算。2010年を100として指数化。2020年は予想。
出所:通商白書2013年、世界銀行、IMF、AB
早速成長ドライバーの答えを言いますと、まさに中間所得層・富裕層の台頭です。図1を見て頂くと足元の増加もそうですが、今後においても新興国では低所得層が減り、一方中間所得層、富裕層は増えていく様子が見てとれると思います。また、それらの新興国の個人消費支出は先進国を上回る勢いで拡大していくと考えています。中国のような新興国は確かに世界の工場と呼ばれ、安い賃金でそれこそ日雇いの仕事などが多かった時代もありましたが、今では賃金も上がり、日本のサラリーマンのような雇用形態も増えてきています。つまり、リーマン・ショック前の資源価格が市場を牽引していた時代とは異なり、足元では先進国の仲間入りをはじめるといった構造的な変化が起こっているのです。これからの新興国市場は安い生産力だけではなく、中間層・富裕層の消費力拡大抜きには語れないでしょう。
●図2:「サービス・個人消費」関連セクターが新興国経済の成長ドライバーへ
▼GDPに占める各産業の比率(左:中国、右:インド)
出所:ファクトセットよりありがとう投信計算、データポイントは各年末時点
図2で示したように、中国とインドのGDP全体に占めるサービス業の割合が拡大してきています。特に中国では近年GDP全体の成長率自体は鈍化してきていますが、それは100年前新興国だった米国や50年前新興国だった日本を見ても同じことだと思います。重要な事は経済全体の成長が鈍化する中でも伸びる産業はあるという点です。工業から個人消費の恩恵を受けやすいサービス業への経済活動の変化は構造的な変化と言えるでしょう。具体的な例をいくつか挙げるとすると、例えば教育銘柄などがあります。経済全体の成長が鈍化してゆく中で、より良い仕事に就こうとすれば、一つの基準としてより高い学歴が要求されると考えらえます。そういった環境下で高度な教育に対する需要は大きいでしょう。他の例としては、最近日本を訪れる海外旅行者は増えています。その多くは爆買いに象徴されるように中国人の方々も多いのですが、なにも海外旅行だけでなく、中国国内旅行も所得が増えるにつれ増加の傾向にあります。そういった中国国内旅行の需要増の恩恵を受けている大手ホテルチェーンもサービス業の一つの例でしょう。さらに旅行関連で、アジアの新興国と同様中間層の台頭がめざましいハンガリーなどの東欧でシェアを伸ばしているLCCエアラインなども個人消費拡大の恩恵を受けて成長すると考えられます。また、ファッションに対する消費も増えており、カラーコンタクトレンズを製造している会社にも今後の成長性を垣間見ることができます。あげればきりがありませんが、もし詳細が気になるようでしたら、今開催しているセミナーに参加頂けますと幸いです。
●図3:新興国株式市場の推移(円ベース)
出所:ファクトセットよりありがとう投信計算、1996年年初を100として指数化、2018年1月31日までの推移
●図4:値動きの大きさの推移(250営業日価格変動リスク推移、円ベース)
出所:ファクトセットよりありがとう投信計算、2018年1月31日までの推移
図3に示したように、今回の上昇相場はリーマン・ショック前の上昇相場と比べると、牽引しているドライバーが異なる点をご理解いただけたでしょうか?最後に、価格変動リスクの話もさせてください。新興国株式市場は確かに価格変動リスクという観点でみると、先進国に比べると以前リスクは高いです。しかしながら、図4で見られるようにその幅もかなり狭まってきました。中間所得層の増加による消費力の拡大という成長ドライバーがあり、かつ以前と比べるとリスクも低位になってきたことから、当ファンドとしては長期投資の対象として新興国市場は最も魅力のある地域と考えております。セミナーの方では、こういった消費拡大の恩恵を受ける銘柄の成長ドライバーを説明しながら、少しでも我々の長期投資のスタンスについて感じて頂けたらと考えておりますので、お時間にご都合つきましたら是非参加頂けますと幸いです。
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
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