もう一つの大きくて美しい長期投資
先日、子供達と近所のショッピングモールへ行った際、大きな保険屋さんの前を通りました。その保険屋さんには子供が遊べるようなスペースがあり、『おもちゃすくい』のイベントも開催しているようで、我が家の子供達はゴキブリホイホイのように吸い込まれて行きました。子供たちが遊んでいる間に保険のお話をする営業スタイルのようでワンオペで疲れていたこともあり、話を聞いてみることにしました。どうやら生命保険の話らしく、様々なライフイベントに備えライププランを策定するといった内容でした。
担当の方:『ご結婚された際もおカネかかりましたよね?同じようにこれからマイホームの購入やお子さんの教育費など何かとおカネがかかります。漠然と悩むより、おカネの見える化をしてみましょう!』
私:『結婚式もしなければ、指輪も買わなくていいと妻に言われたので、ほとんどおカネかかっていません』
担当の方:『...』
おっと、こんな感じだと開始39秒で会話が終わってしまい楽しく遊んでいる子供達の居場所がなくなるので、とりあえず頷きながら話を聞いてみることにしました。都心のマンションを買ったら相場がいくらだとか、子供が中学受験して私立に通い始めたらこれぐらいかかるとか、親の介護が必要になったらいくらかかるかなど一通りおカネにまつわることを資料に沿って説明してもらいました。もうすでに考えていたことばかりだったので特に目新しさはなかったのですが、ある意味この型にはまった『ライフイベント』自体が変わってしまう可能性を考慮すべきではと思いました。
例えば教育費の場合で考えると、最近米国ではエントリーレベルの業務をAIが代替することにより大卒若年層の採用が冷え込んでいると聞きます。これは高額な塾代や習い事などに投資をして子供をいわゆる日本の立派な大学に入れたとしても、将来年収3939万円級のITエンジニアになれる可能性が低くなることを示唆しています。アメリカ様で起こったことはそのうち日本でも起こりますからね。結局のところ労働市場にも需要と供給のメカニズムが働くので皆が皆安定したホワイトカラー職を求めて大学へ進学し供給が増える中、AIがジュニアレベルの需要を満たしてくれるとなると、既存の教育を受けた若者は行き場所を失うことになるでしょう。もちろん保険屋さんの方にそこまで寄り添ったライフプランを立てて伴走してくださいなんて期待しておりませんが、そもそも『結婚式する必要あるの?』『マイホーム買う必要あるの?』『塾行く必要あるの?』『大学に進学する必要あるの?』『介護する必要あるの?』など今まで常識と思われてきた前提自体が変わる可能性を考える必要があるのかもしれません。
若年層の失業率上昇が目立つ
【米国の年齢別失業率】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
AIの急速な進化と普及により、世の中が目まぐるしく変わっています。政府もこういった変化に対する政策を打つでしょうが、過去の政策遂行速度とAI普及の速さを鑑みると今まで以上に後手に回る可能性が高いでしょう。国に多くを期待せず日々自分自身で考え、自分を自分で教育&updateする必要があると思います。『考えて考えて考えて考えて実行してまいります!』より『考えて考えて実行して実行して実行してまいります!』ぐらいのスピード感がいいかもしれませんね。よーし、意識高い系になってきたぞ!勉強する気が出てきたからYouTube観まくって勉強だ!... デジタル赤字がさらに増えそうですね~
【国別AI民間投資額】
(2024年)
出所:『Artificial Intelligence Index Report 2025』より、ありがとう投信作成
【マグニフィセント・セブンのAI設備投資はさらに拡大】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成。コンセンサス予想は2025年10月末時点
元来天然資源に乏しい日本では、人や組織の能力に頼り経済成長を成し遂げてきました。しかしながら、バブル崩壊後はコスト削減を優先し人材育成の投資をケチった結果、希少な資源である人的資源の優位性も失いました。最近毎日のように見かける『責任ある積極財政』の中には、未来を生きる人達への予算もあるかと思います。子育てと介護をする身としては、過去や現在の費用に貴重なおカネを使うぐらいなら、失敗してもいいから未来を生きる人達に使ってほしいものです。ただし、受益者の皆様もご存じの通り投資が実を結ぶには時間がかかります。次の世代を教える世代からupdateするとなると、結果が出るまでに数十年かかることを覚悟したうえで、短期的にはつらい時期を耐える必要があります。バブル崩壊時に投資できなかったことが悔やまれます。残念ながら何かあったらバラマキに頼るのが現状ですので、長期的な展望を議論する以前の問題でしょう。国に頼れない時代、ますます自分自身で考えて決断する力が求められます。そういった自立した人材を育てることが本当の意味での長期投資なのかもしれませんね。
日本の見栄え悪いですね~
【一般政府債務残高(グロス)対GDP比】
おっ!少し見栄え良くなったかも!
何がネットされているんでしょうかね~
考えてみましょうか?
【一般政府債務残高(ネット)対GDP比】
比較してみるとそんなに悪くなさそうじゃん?
【プライマリーバランス対GDP比の推移】
出所:ファクトセットより、ありがとう投信作成
周りの皆が進学だから私も僕も大学進学!
卒業時...学んだことを活かす仕事はあるか?
【職業別有効求人倍率(国内)の推移】
(一部の職業を抜粋)
出所:厚生労働省より、ありがとう投信作成
外国人が日本に来てくれる間は何とかなるが...
外国人労働者獲得競争に買い負けるようになると...
国内の大卒をリスキリングか?
高額な塾代は何だったんだろう?なんてことには...
【人手不足を外国人労働者受け入れでカバー】
(2028年度末時点)
出所:出入国在留管理庁、厚生労働省『特定技能制度及び育成就労制度の受入れ見込数について(案)』より、ありがとう投信作成
本年もありがた山でございました!
ありがとう投信株式会社
ファンドマネージャー 真木喬敏
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【日本株】→FactSet Market Indices Japan 配当込み(税引き前配当再投資)
【世界株】→FactSet Market Indices World 配当込み(税引き前配当再投資)
【米国株】→FactSet Market Indices US 配当込み(税引き前配当再投資)
【欧州株】→FactSet Market Indices Europe 配当込み(税引き前配当再投資)
【新興国株】→FactSet Market Indices Emerging 配当込み(税引き前配当再投資)
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