金(ゴールド)投資について【後編】

2017年10月18日(水)

 現在の世界経済は、ポピュリズム政党の台頭や北朝鮮問題などによる地政学リスクの高まりやリーマンショック後に続けられてきた金融緩和からの出口に向けて、米国や欧州において金融政策の転換点に差し掛かっており、不確実性が増している中で、他の資産や通貨との相関が低い金を一定割合保有することの意味は増してきています。

 

 実際、各国の中央銀行もここ数年、金の保有量を増やしてきており、金融緩和の出口に備えた行動であるとも考えられます。

  

 特に金融緩和によって、世界的に株価が大きく上昇している一方で低金利が続いており、株式と債券の相関が大きくなっている中、株式ポートフォリオにおいて、金を入れることで債券の分散効果を代替することができると考えられています。

 

 金を保有するメリットがあることは以前より知られていましたが、機関投資家の資産運用において金を組み入れることは今までは保管費用や透明性、流動性などの障壁がありハードルが高かったのですが、現物資産を裏付けとする金ETFが登場したことによって解決され容易になりました。

 

 先ほど見てきた通り、色々な金への投資方法があるなかで、機関投資家のグローバルなマルチアセットのポートフォリオの運用において、保有コスト、透明性、日中の売買能力などで金ETFを活用する方法が適切であると考えられています。

 

 現在、国際分散投資におけるグローバルなマルチアセットポートフォリオにおいて、金の役割が注目されております。その理由としては、ポートフォリオの中に金を加えることによって、分散効果を高めるとともにリスク調整後リターンが向上するからと言われております。

  

 

 下図のように、世界株(MSCI ACWI円ベース)の100%ポートフォリオに、金をそれぞれ2%、5%、10%加えたポートフォリオで2004年1月末~2017年9月末シミュレーションをした結果、ポートフォリオに2~10%程度、金を加えることによってリターンが向上して、リスクが下がることによってリスク調整後リターンの改善効果が期待できます。

  

 

 

  

  

 

  

   

   

 

  

 

 出所:ファクトセット、2004年1月~2017年9月のMSCI ACWI(円ベース)、NY金先物価格(円ベース)よりありがとう投信計算

 

 

 

 また、特に金は経済の縮小期や市場混乱期において、株式や為替(ドル円)に対して逆相関の関係があり、ダウンサイドリスクを抑えて最大下落率を抑制する効果も期待することができます。

 

次の図1、2の通り、金は2016年の原油価格20ドル台への下落時やBrexit時などのリスクオフ局面で為替(ドル円)、株価との逆相関の関係があることがお分かりいただけると思います。

  

 

☆図1:ドル円と金は逆相関 ⇒リスクオフ局面の下落相場でダウンサイドリスク抑制

 

 

 

出所:ファクトセットよりありがとう投信作成

 

 


☆図2:株式も金と逆相関 ⇒リスクオフ局面の下落相場でダウンサイドリスク抑制

 

 

 

出所:ファクトセットよりありがとう投信作成

 

 

  以上、見てきました通り、金(ゴールド)へ一定比率投資することは、長期で資産運用をしていく上においてはリスク低減、リターン向上、最大下落率を小さくする効果が見込めるので有効であるのはないかと考えられます。

 

 

 最後になりますが、ありがとうファンドの運用は、長期・国際分散・厳選投資で株式を中心に投資しておりますので、何かのきっかけで短期的に調整が起きた際には価格変動リスクは避けられませんが、市場平均よりは下落しないように、景気サイクルに左右されずに持続的に成長していける企業を選別することによる分散効果に加えて、株式と相関の低い金を一部保有することでダウンサイドリスク抑えながら世界経済の成長・企業の利益成長の恩恵を享受できるものと考えております。

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