【今月のFP情報コラム】台風やゲリラ豪雨で車が冠水! 車両保険の仕組みと注意点(2026年10月)
近年、集中豪雨や台風による浸水被害が増加しており、愛車が水没してしまうリスクは誰にとっても他人事ではなくなっています。
万が一、車が冠水や浸水などの水害に遭ってしまった場合、その損害を補償してくれるのが自動車保険の「車両保険」です。
今回は、万が一に備えて知っておきたい水没損害の「車両保険」について解説します。
台風、洪水、高潮による水没損害は「車両保険」で補償される?
自動車保険の「車両保険」を契約していれば、台風、洪水、高潮による水没損害は基本的に補償の対象となり、修理費用や全損時の保険金を受け取ることができます。
大前提として、強制保険である自賠責保険は対人賠償のみを目的としているため、車の修理代は一切補償されません。そのため、水没損害の修理や買い替えの費用をカバーするには、任意の自動車保険にオプションとして付帯する「車両保険」への加入が必須条件となります。
車両保険には大きく分けて、補償範囲が広い「一般型」と、保険料が安いかわりに補償範囲が限定された「エコノミー型」の2種類あることが一般的です。エコノミー型は、自損事故(単独事故)や当て逃げ被害などが補償対象外となります。水没被害は「台風」「竜巻」「洪水」「高潮」といった自然災害によるものとみなされるため、基本的にはどちらのタイプに加入していても保険金が支払われます。
車両保険で水害が補償されない主なケース
台風、洪水、高潮などでお車が水没した際、自動車保険で補償されるかどうかは、被害の原因や加入している車両保険のタイプによって異なります。ここでは、車両保険で補償されない主なケースについて解説します。
■地震・噴火・津波による水没は原則として対象外
「地震」や、それに伴う「津波」によって車が水没・流失した場合は、通常の車両保険では免責(補償対象外)とされるのが一般的です。津波による水没にも備えたい場合は、特約として「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」などを別途契約しておく必要があります。
■故意・重大な過失などでは保証されない場合がある
災害の規模だけでなく「契約者や運転者の過失」が原因とみなされる場合も、補償が受けられない、あるいは制限される可能性があります。例えば、すでに道路が深く冠水していることが明らかな状態であるにもかかわらず、無理にそのエリアへ車を進入させて水没させた場合などは、自己の過失による損害と判断され、保険金の支払いを拒否されるリスクがあります。ただし、最終的な判断は個別の約款や事故状況によるため、保険会社への確認が必要です。
水没車の全損・分損とは?
水没損害の程度によって「全損(ぜんそん)」と「分損(ぶんそん)」の2つに区別され、受け取れる保険金の額やその後の手続きが大きく異なります。
車両保険における全損とは、修理が不可能な状態(物理的全損)、あるいは修理費用が「契約時の設定金額(車両保険金額)」を超えてしまう状態(経済的全損)を指します。つまり「修理するよりも買い替えた方が安い」状態をいいます。さらに水没では、車の電気系統やエンジンの内部、ハイブリッド車やEVの高電圧系統などに影響が及ぶ可能性があり、見えない部分の損傷で修理費が高額化し、結果として全損と判定されるケースが多いのが特徴です。外観だけでは損害の大きさを判断できないため、保険会社や整備工場に確認してもらいましょう。
全損と認定された場合、一般的には免責金額(契約者が自己負担する金額)は差し引かれず、設定した保険金額が支払われます。ただし、全損保険金が支払われた時点でその車両の所有権は保険会社に移り、現在の自動車保険契約自体も終了することになります。所有権が移った車両は、保険会社が引き取り、処分まで行うのが一般的で、自分で勝手に修理・廃車にできません。
全損に該当しない損害は、一般に分損と判定され、修理費などの損害額から、契約時に設定した免責金額を引いた額が保険金として支払われます。修理費が免責金額以内であれば保険金は支払われません。
保険金を受け取って車を修理すれば、その後も同じ車に乗り続けることができますが、水没車の場合は後から電気系統のサビや不具合、異臭といったトラブルが再発するリスクを伴うため、自己判断で使用を再開せず、整備工場などの専門業者に点検してもらいましょう。
また、分損で保険金を使用した場合は、翌年度のノンフリート等級※が1等級下がり、「事故有期間」が1年加算されるため、翌年の保険料が上がる点にも注意が必要です。修理費用が数万円程度と少額な場合は、保険を使わずに自費で修理した方が費用を抑えられるケースもあります。契約条件によって扱いが異なるため、請求前に確認しておくと判断しやすくなります。
※ノンフリート等級:自動車保険のノンフリート等級とは、事故歴に応じて保険料の割引や割増を決める1から20までの段階的な区分(制度)のこと
ローンや残価設定型クレジット(残クレ)の返済が残っている車が水没してしまったら!?
車の使用継続が不可能(廃車)になったとしても、残っているローンや残価の支払い義務はそのまま残ります。 車という担保や実体がなくなっても、金融機関やディーラーとの間で交わした「お金を借りて返す」という契約自体は消滅しないためです。
このような状況に直面した際は、まず速やかに加入している自動車保険(車両保険)の契約内容を確認し、保険会社へ連絡を入れましょう。車両保険に加入しており、かつ「台風」や「洪水」「高潮」といった自然災害による水没が補償対象に含まれていれば、保険金が支払われます。水没によって修理が不可能な「全損」と判定された場合、支払われる保険金で残債を一括清算するのが一般的な解決方法となります。
なお、特約として「車両全損時諸費用特約」や「新車特約(新車買替特約)」を付けていれば、次の車の購入費用をカバーできる可能性もあります。
一方で、車両保険に加入していない場合や、受け取れる保険金だけでは残債をすべて返済しきれない場合は、自力で残りの債務を支払い続けるか、一括での清算を求められることになります。特に残価設定型クレジット(残クレ)の場合は、最終回に車を返却することを前提とした契約になっているため、車が水没して価値がゼロ(または廃車)になると、最終回に据え置かれていた「残価」も含めた全額の支払いを求められるケースがほとんどです。どうしても支払いが困難な場合は、勝手に放置せず、融資を受けているローン会社やディーラーに事情を話し、今後の支払い方法やスケジュールの変更について相談することが不可欠です。
また、分損(水没しても修理可能な状態)と判断された場合、契約は継続となり、自己負担もしくは保険金で修理をして乗り続けることになります。しかし、修理を行った場合、返却時の評価が大幅に下落するため、「当初予定されていた残価」と「水没後の実際の査定額」との差額分の精算金(ペナルティ)が発生する可能性があります。
車両保険に加入する必要性が高いケース
■ 新車・高級車・市場価値(時価)が高い車に乗っている: 車両の価値や修理費用が高額になるため。
■ カーローンの残債がある: 車が全損で使えなくなってもローンだけが残るのを防ぐため。
■ 日常的に車を頻繁に使う: 通勤や仕事などで利用頻度が高く、事故のリスクに遭う機会が増えるため。
■ 災害リスクが高い地域に住んでいる: 台風、洪水、飛び石など、予測できない自然災害の被害に備えるため。
水没被害への備えとして心強い車両保険ですが、すべての損害を完全に補填できるわけではありません。まずは、保険の仕組みや条件を理解し、加入の有無や特約の選択には、お住まいの地域の災害リスクや愛車の現在価値、そして保険料と安心のバランスを考慮した上で、冷静に見極める必要があります。
異常気象が日常化しつつある今、ぜひこの機会に、ご自身の保険の「中身」をチェックしてみてはいかがでしょうか。内容に不安がある場合は、早めに保険会社や代理店へ相談しましょう。
<本件に関するお問合せ>
ありがとう投信株式会社 カスタマーサービス部
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