個人投資家の存在感
新聞報道によれば、企業の業績悪化の影響で株主優待を廃止する企業が増えている一方で、内容を拡充する企業も増えているのだそうです。株主優待は国内の個人投資家だけが恩恵を受けることが多いため、公平性の観点から批判を受けることもありますが、安定株主として個人に期待をかけるのは、経営者としては健全な考え方だと思います。
企業にとって個人株主が多いということは、安定した保有構造を意味します。機関投資家ですと、多くの投資家が一度に同じような投資判断をする、という状態が比較的おきやすいのに対し、個人株主全体はさまざまな考え方や意向を持った投資家の集まりですから、同時に一方向に動くという傾向はそれほど強くありません。短期の運用成績を求められる機関投資家や財務上の制約がある金融機関などは、株価がどんなに割安でも売らざるを得ないということが多々あるのですが、個人投資家には、企業の経営方針に納得すれば辛抱強く結果が出るのを待つことができる懐の深さがあります。また、食品や小売りなど消費者に身近な企業であれば、株主はユーザーとして企業を応援してくれるでしょう。
同じことが株式市場全体に対しても言えそうです。機関投資家はやはり一度に一方向に動きやすい傾向があります。過去においては、金融機関が株を大量に保有していたために、バブル後の後始末では株式市場が大きく傷つきました。日本株市場で影響の大きい外国人投資家も、時として激しく動きます。外国人投資家にとっての日本株はそれこそ外国株、つまりリスクの高い資産であって、資産全体の中で主要な位置を占めることはないのが普通です。ですから彼らの経済事情によって、すぐに減らされたり増やされたり、ということが起こるのです。
企業の顔を見て投資している個人投資家は、市場にとって案外頼もしい投資家なのです。多様な考えを持った数多くの個人の存在が株式市場の厚みとなり、海外投資家の気まぐれ(?)や金融機関の財務事情によって大きく飛んだり跳ねたりすること無く、安定した資金調達の場を提供し得るのではないでしょうか。個人の株式投資を促進すべき理由がここにもあると思います。
ありがとう投信ファンドマネージャー 川元 由喜子
2009.6.15
川元 由喜子 - Yukiko Kawamoto -
一児のママのファンドマネージャーです。NY勤務の経験もあります。
日本の大手証券会社からスタートして、外資の運用会社での日本株運用責任者まで幅広く世界の金融を見てきました。元テニス部キャプテンですが、運用ではスマッシュ頼りではなく辛抱して球をつないでいきます。

