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ありがとうコラム

会計指針を考える

先月の300号で、業務水準道半ばと書いた。決して謙遜ではない、事実である。皆様はバブル崩壊以降の日本経済をどのようにお考えだろう。随分変わったと誰もが口にする。が、具体的にどこがどう変わったかと突っ込まれると、答えに窮してしまう。そこで、今回は中小企業の身近な存在である銀行の変遷を取りあげて、我々の業務水準との関わりを整理してみたい。

平成4年(1992年)頃にバブルは崩壊した。以降、我が国は長い間デフレ状態に陥って銀行は破綻し、多くの銀行は不良債権処理に追われた。折しも金融ビッグバンが始まり、ペイオフは現実のものとなった。その後は一握りの大手企業に牽引されて僅かな経済成長が続いた。現在は投機マネーが原油高騰に拍車をかけ、バイオ燃料問題が世界的な食料不足を招いている。

バブル崩壊以降、金融機関は生き残りをかけて戦っていた。経営立て直しのため①不良債権処理と②コストの削減に尽力した。①にはエース級の人材を投入した。が、その影響か融資姿勢は慎重になる。それを「貸し渋り」と囃したてられ非難を浴び、監督官庁の指導が入った。思い余って②の策を優先、店舗整理や人員整理でスリム化を図り、3分の1の人材が消えた。

しかし、結果は思わしくない。現在、不良債権処理が一段落したのは、メガバンクと呼ばれる10行のみ。他の560行は未だ処理の目途が立っていない。銀行の苦悩は深い。エース級は相も変わらず不良債権処理、得意先係は人員削減で担当先が2~3倍になった。そこで再び問題が噴出。得意先係の本来業務は、お客の動向を把握する貸し出し審査のキーマンだからだ。

だが多忙でお客様の状況把握ができないと勢い審査も甘くなる。ましてや、地方の中小企業が疲弊して屍累々となれば、処理しても処理しても不良債権は次々に湧いてくる。困ったことだ。銀行の危機は企業や国民の危機でもある。共倒れにならぬ様、何とかしなければならない。それ故に銀行及び利害関係者が真に必要とする財務諸表の作成が求められるようになった。

会計参与制度、それを支える「中小企業の会計に関する指針」(以下「指針」)は、以上のような経緯を踏まえて生まれてきた。今の企業会計は、国際会計基準の影響を受けて企業価値の把握に重点が置かれる。平たくいえば、この会社を清算したら幾らになるかという売却時価主義の考え方。その一方で収益力の把握にも努め、返済能力の有無の判断も重視した。

さて、そうすると皆様の慣れ親しんだ法人税法を取り入れた決算書とは相当異質なものとなる。関心事である資金繰りと納税額の把握が少々厄介になる。資金繰りはキャッシュフロー計算書を理解すれば済むが、納税額の把握は当面自前の表を用意するしかないだろう。なんだか面倒くさそうと思われるかも知れない。その通りだが、自分の為にも乗り越える必要がある。

私は銀行は企業と運命共同体と考えている。不良債権処理のため赤字決算も厭わない銀行の勇気を讃えたい。会計事務所も銀行を支えるため審査しやすい決算書を作りたい。これが我が関与先のためだからだ。だが、指針による決算書を作成すると、従前の基準で黒字の企業が赤字になることもある。更に銀行の認識不足により貸出審査で不利益を蒙る恐れがでてくる。

現在、指針の普及に最も熱心なのは不良債権処理を終えたメガバンクである。他行も己のために指針に対する理解を示し普及に尽力してほしい。

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