郵便局は民営化でどうなったのか②
~民営化による変化と今後の予想 郵便事業と郵便局編~
先月に引き続き、郵政民営化について取り上げます。今回は郵便局の3大事業の残る1つであり本来業務とも言える郵便事業と、窓口業務の担い手である郵便局についてご説明していきます。
郵便事業は半官半民?
郵政民営化についてもう一度おさらいしておきます。民営化により、政府が100%出資する日本郵政株式会社が設立され、グループの持株会社の役割を担っています。持株会社である日本郵政の100%子会社として、①(株)ゆうちょ銀行②(株)かんぽ生命保険③郵便事業(株)④郵便局(株)が設立されました。
「日本郵政グループ」についてまとめると、下表のとおりとなります。
| 社名 | 日本郵政 | ゆうちょ銀行 | かんぽ生命保険 | 郵便事業 | 郵便局 |
|---|---|---|---|---|---|
| 株主 | 政府 | 日本郵政 | 日本郵政 | 日本郵政 | 日本郵政 |
| 業務 | 持株会社 | 銀行業務 | 生命保険 | 郵便業務 | 郵便業務 |
| 従業員数 | 3,500人 | 11,600人 | 5,400人 | 99,700人 | 119,900人 |
| 看板の色 | 赤 | 緑 | 青 | 赤 | オレンジ |
| 上場予定 | 遅くとも2010年に上場予定 | 遅くとも2010年に上場予定 | 遅くとも2010年に上場予定 | なし (日本郵政100%) |
なし (日本郵政100%) |
| 民営化 | 民営化後も政府が1/3超保有 | 2017年までに完全民営化 | 2017年までに完全民営化 | 政府の関与残る | 政府の関与残る |
これら4社のうち、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険は2017年までに完全民営化されることが決まっていますが、郵便事業と郵便局については2017年以降も政府の関与が残ることになっています。理由はいろいろあると思いますが、民営化時に議論となった、過疎地などの郵便ネットワーク維持のためというのが大きなものの1つです。現状では、ネットワーク維持のために持株会社の収益を原資にした社会・地域貢献基金が新たに設けられ、基金の積立金の運用益を郵便事業会社と郵便局会社に交付し、赤字郵便局の補填に充てることになっているそうです。
もはや「かんぽ」ではない!?
民営化によって、郵便局で取り扱う生命保険に変化が生じています。これまでの簡易保険は、「簡易生命保険法」に基づく商品という位置づけでした。民営化に伴い、例えば学資保険は「新学資保険」、普通定期保険は「新普通定期保険」と名前を変えました。名前の変わり方は非常に微妙なのですが、民営化後の契約は、他の生命保険会社と同様に、保険業法による生命保険契約ということになります。そのような意味で、従来の簡易保険はもはや存在せず、社名(かんぽ)にその名残をとどめているだけとも言えます。その他、民営化に伴ってどのような扱いになっているのか、気になる点を順を追ってみていきましょう。
なお、郵便事業株式会社だけはなぜか略称は日本郵便と言うそうです。従業員数を見ると、いかに巨大な組織であるかがわかると思います。
郵便事業の今後
ゆうちょ銀行が民間銀行と、かんぽ生命保険が民間生保会社と競合するのと同じように考えると、いわゆる郵便物とは微妙に位置づけが異なるかもしれませんが、郵便事業の競争相手は宅配便事業を行っている民間会社ということになります。ただし、郵便事業については世界最大の○○といった形容が成り立たず、例えばクロネコヤマトのメール便の取扱数は、既に郵便局の冊子小包に迫る勢いです。一般の郵便物も今後民間に開放されていくことが予想されており、郵便事業は難しい局面にあるといえます。これまでも郵便事業は赤字で、銀行業務と保険業務の利益で赤字を穴埋めしてきたとも言われていますが、こうした中、昨年10月に民間宅配事業会社大手の日本通運との間で宅配便事業の統合を中心とした包括的な提携が結ばれることが発表され、動向が注目されています。郵便事業について明るい未来がなかなか描きづらい中、何とか生き残りを図っていこうというスタンスが見えるように思います。
郵便局の今後
郵便局株式会社の店舗数は約24,600店舗あり、これはコンビニ最大手であるセブンイレブンの店舗数の約2倍であるとのことです。圧倒的な店舗網を持ち、グループの窓口業務を担う郵便局株式会社の主な収益源は、業務委託を受ける3社からの委託手数料ということになります。その他、民営化に伴い年賀状印刷サービスや映画のチケット販売などもはじめています。ただし、中長期的には完全民営化後のゆうちょ銀行やかんぽ生命保険との業務委託契約を安定的に続けていけるか否かという問題をはらんでいます。また圧倒的な店舗網を支える従業員にかかる人件費も相当なものであると推測されます。郵便事業と郵便局については赤字を補填する必要が生じる可能性があります。これも政府関与を続ける理由の1つであると思われます。
様々な課題を抱えながらもスタートした郵政民営化ですが、民営化によって法人税等の納税が発生するなど、経済全体に及ぼす影響も大きいものがあります。今後も動向に注目していきたいと思います。
※この文章は上野会計事務所さんが発行している冊子から転載させていただいております。


