法令遵守とMOTTAINAI
今年は、原材料の偽装や賞味期限が世間を騒がせた。いずれも、法令遵守(Compliance)に関わる問題である。偽装は論外だが、賞味期限に至っては少々考えさせられる。過去にも一度、消費期限と賞味期限を巡っての論争があったような気がする。どうもマスコミの論調は、ヒステリックに過ぎるような気がしてならない。もっと科学的な検証ができないものか。
食品の期限表示の内、消費期限は、いわゆる「生もの」、弁当、生菓子類及び食肉等の製造日を含めて概ね5日以内で品質が急速に劣化する食品に適用される。定められた方法で保存した場合、品質の劣化に伴う安全性を欠くことがないと認められる期限を示すものである。従って、弁当等は時間表示することが望ましい。必ず期限内に消費するのが安全である。
他方、賞味期限は、製造日を含めて概ね5日を超え、品質が比較的劣化しにくい食品に適用される。ハム、ソーセージ、冷凍商品、即席麺類及び清涼飲料水等である。期限を過ぎても直ちに「食べられなくなる」ということではなく、およその目安である。従って、3ヶ月を超えるものは「年月」で、それ以外のものは「年月日」表示で良いことになっている。
この期限の設定は、その食品の製造又は加工者が、食品等の特性、品質変化の要因や原材料の衛生状態、製造・加工時の衛生管理状態、保存状態を勘案し、科学的、合理的根拠に基づき責任を持って行う。もう、ご理解戴けたと思うが、業者の自己責任である。だから、会社は事故による廃業に追い込まれるリスクを考え合わせ、余裕を持って期限を設定する。
ラベルの張り替えも、ここに問題がありそうだ。大丈夫との自信があるから、ついやってしまう。しかし、JAS法と食品衛生法に基づき自分で決めた期限を破ったら、法令遵守違反になってしまう。近年、内部統制の一環として企業の法令遵守が、殊更厳しく追求されるようになった。社内ルールの筈なのに、守らないと世間から予期せぬしっぺ返しを受けることになる。
「白い恋人」にしても「赤福」にしても、お気の毒としかいいようがない。品質的には問題なかったとしても、中小企業ゆえに法令遵守のための内部統制が甘かったように思う。それにしても、賞味期限切れの餡を回収して、それを煮詰め直して再利用することに何の不都合があろう。食べ残したり、食べ物を粗末にするのが、美徳とでも思っているのだろうか。
2004年、ケニヤの女性環境保護活動家ワンガリ・マータイさんがノーベル平和賞を受賞した。彼女は「MOTTAINAI」(もったいない)という日本語を世界中に流行らせたことでも有名である。彼女は、環境保護の合い言葉としてのMOTTAINAIは、Reduce(消費削減)、Reuse(再利用)、Recycle(資源再利用)、Repair(修理)の4つを表していると解説している。
21世紀は環境保護がテーマ。限りある資源を人類がどう分かち合うのか。特に食料、エネルギー、水の問題は避けては通れない。我が国は、食料自給率39%、石油は全て輸入、水は一応豊富だ。だが、安全な水は地球上に数%しか存在しない。唐突にマータイさんの話を持ちだした訳ではない。日本の現実を見つめ、賞味期限を科学と法律の視点から議論してほしかった。
法令遵守とMOTTAINAIを両立させる道を考えるべきだろう。食品の安全性を語るとき、法令遵守が自縄自縛になったのでは本末転倒と思うからだ。
※この文章は上野会計事務所さんが発行している冊子から転載させていただいております。


