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ありがとうコラム

特別編2 裁判員制度 ~冤罪はなくなる?~

裁判員制度の導入により、裁判が「分かりやすく、早く、公正に」行われしかも法に対する国民の理解が深まると期待されている一方で、一般人が人を裁くことを問題視する声も数多く上っています。

今月号では、裁判員制度の裏側に潜んでいる人的リスクにスポットを当てて考えてみたいと思います。

◆裁判員=裁判官

昔から裁判官には仙人のような公平性、中立性が求められており、「飲み屋でひいきの野球チームを応援することさえできない」といった話も耳にします。これは半分冗談にしても、戦後ヤミ米を食べることを頑なに拒否して餓死した裁判官が伝説になっているように、この清廉潔白さが私たちの思い浮かべる”裁判官”のイメージではないでしょうか。しかしそれ故に「世俗の感覚とかけ離れた判決が出る」という非難が多かったことも事実です。その部分だけを見れば、裁判員制度によって世間の感覚が取り入れられることは、ある意味有意義なことかもしれません。しかし裏を返せば、公正な裁判のために究極まで自己を律している裁判官と、一般人から抽選で選ばれた裁判員が「被告人を裁き、判決を下す」という立場においては、全く同じ権利を持つという危険をはらんでいるのです。

例えば、裁判官が3名と裁判員が6名の裁判において、裁判官3名全員と裁判員1名の計4名が被告人は有罪であるとし、残りの裁判員5名が無罪であるとした場合は、被告人は無罪となるのです。つまり、法の専門家である裁判官と一般人から選ばれた裁判員は、多数決において全く同じ1票なのです。中には「最終的には裁判官が結論を出してくれる」と誤解されている方も多いようですが、もし、裁判員に選ばれたなら、自分も裁判官と同じ重さの権利と義務を持つということを肝に銘じておかなければなりません。

◆世論の怖さ、マスコミに弱い日本人

被告人だけでなく、弁護団までが常識では理解し難い主張をしていることで、裁判の行く末が大きな注目を集めている山口県光市母子殺害事件。最近、テレビで人気の橋下弁護士がある番組中に、この弁護団の懲戒請求をあおるような発言をし、結果として多くの懲戒請求が全国各地の弁護士会に殺到する異例の事態となりました。当初から国民感情が被告人と弁護団に否定的だったことに加え、マスコミ報道が弁護団の主張の一部を誇張するように取り上げたため、世論は『被告人&弁護団の発言=虚偽⇒被告人は死刑』という流れが完全にでき上がっています。もし、この事件が裁判員制度の対象だった場合、かなりの確率で被告人に死刑判決が下されるのではないでしょうか。

ここで考えなければいけないのは、この事件の顛末よりも、こうしたメディアや多勢の意見に流されやすい日本人の体質です。このようにマスコミ報道が過熱するような事件で、裁判員に選ばれた人が事件の上っ面だけを捉え、偏見に固まって裁判に臨むことがあるとすれば、それこそ裁判員制度にひそむ最も危険な要素ではないでしょうか。極端な言い方をすれば、権力を持つ者がマスコミを利用して、大衆心理をコントロールすることにより判決を自在に操ることさえ可能なのです。国民の「知る権利」、メディア側の「報道の自由」、そして「公正な裁判」のバランスは非常に微妙で難しい問題ですが、裁判員制度が目的どおり機能し、冤罪をなくすためにも、乗り越えなければならないハードルだと思われます。

◆不審な電話にご注意!!

最近、裁判員制度を騙る不審電話が増えていますのでご注意下さい。「裁判員に選ばれたので住所、氏名、職業などを教えて欲しい」とか「裁判員になるための講習負担金を支給するので口座番号を教えてほしい」などと、いかにも裁判所からの電話と思わせるような悪質な詐欺事件が発生しているようです。基本的には、裁判員制度は平成21年に開始される予定なので、現時点では模擬裁判の呼び出し状等以外に、裁判所から問合せがくることはありませんし、裁判員はもともと選挙人名簿から選ばれるため、あらためて住所等の問合せがくることもありません。また、裁判員に対しては、法律に定める日当が支給されることはあっても、何らかの支払いを求められることはありません。

甲府地方裁判所においても、10月1日~3日にわたり初めて一般の人から裁判員を選んだ模擬裁判が行われました。今回は県内企業10社や県庁などの協力により裁判員が選定されましたが、今後実施される模擬裁判では皆さんが裁判員候補者に選ばれて、裁判所に呼び出されるかも知れません。

 

※この文章は上野会計事務所さんが発行している冊子から特別編として転載させていただいております。

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