特別編 裁判員制度 ~最近の話題から~
「裁判員になったら、どういう心構えで裁判に臨むべきだろう?」、「社員が裁判員に選ばれた場合の休暇制度はどうしよう?」目前に迫った裁判員制度に対して、自分が裁判員に選ばれた時の判断基準を固めるとともに、企業としては、社員が裁判員に選ばれた時の具体的な対応を決める時期にきています。今月号では、裁判員制度に関する最近の情報の中から、気になるトピックや問題点などを取り上げてみたいと思います。
◆裁判員選任に大きな地域格差が!
8月中旬に最高裁が発表した試算結果によると、裁判員に選ばれる確率は、最も高い大阪が「年間2560人に1人」なのに対して、最低の金沢は「年間1万4800人に1人」と、約6倍も差があることが判明しました。これは、全国の各地方裁判所管内で平成18年に発生した裁判員制度対象事件数を有権者数で割って算出したもので、全国平均は年間4160人に1人となっています。多大な時間的拘束と精神的重圧を強いられる裁判員の選任において、これほどの地域格差が生じている実態は、制度施行までに改善すべき重要な課題ではないでしょうか。ちなみに山梨県(甲府地方裁判所管内)は、年間7370人に1人と全国で下から6番目の低確率です。”宝くじ”とまではいきませんが、山梨県で裁判員に選任されるのはかなり運がいい(?)人と言えます。また、裁判員制度の対象となる事件は強盗致傷30%、殺人21%が上位を占めており、裁判員になると約半数は強盗致傷事件か殺人事件を担当することになるようです。
◆裁判は3日で終わる?
裁判に参加する日数については、かねてから関心の高い問題でした。最高裁の集計によると、平成18年に発生した裁判員制度対象事件のうち、公判前整理手続き(裁判を早く終わらせるため、初公判前に検察側と弁護側がそれぞれの主張を裁判所に伝え、争点を絞り込んでおくこと)が実施された事件の公判回数が、平均3.3回だったことが分かりました。この結果通りとすれば、裁判員が参加する裁判の大半は3日あれば終わることになりますが、いくら国民の義務とはいえ、多忙なサラリーマンや個人事業者が3日も仕事を休むのは正直厳しいのが実情でしょう。
◆中小企業の対応は?
裁判員制度に対して反応の鈍かった中小企業においても、休暇制度を設ける等の取り組みが活発になってきました。中小企業のT社では、裁判員として会社を休む場合は結婚休暇等と同様に特別休暇とすることを決め、就業規則に「裁判員の職務に従事する場合は特別休暇を取得できる」と盛り込みました。基本的には無給ですが、有給休暇が残っている場合は有給扱いも可能としています。また、休暇を認めるための事務手続きや裁判員を口実にした「ズル休み」を避けるために、会社を休んで審理に参加した裁判員に対しては、裁判所に出頭した「証明書」が発行されることになっています。
◆辞退の可否
8月28日には、サラリーマンだけでなく主婦や農家、自営業者までを対象とした模擬選任手続きが、大津地裁で行われました。そこで新たに示された裁判員辞退の判断基準は次のようなものでした。
<辞退できる理由>
- 公判の日が会社の支払日である経理担当社員
- 妻と2人で店を経営していて、他に従業員がいない 等
<辞退できない理由>
- 転勤の可能性があり、地元の人間でないので裁判に関わりたくない
- PTAの重要な会合に出席する主婦 等
また、この模擬選任手続きの日には2人が無断欠席をしており、これが本番なら10万円以下の過料が科されることになります。
中学高校の社会科教師を対象に裁判員制度の研修会を開くなど、若い世代に法教育を根付かせようとする動きが出ています。しかし、すぐに裁判員となる現役世代にこそ、早急な教育が必要だと思われます。国民の意識、知識が今のままで制度がスタートして、本当に大丈夫なのでしょうか?
※この文章は上野会計事務所さんが発行している冊子から特別編として転載させていただいております。

