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ありがとうコラム

事実誤認

ありがとう投信の役員会で面白い話を聞いた。独立系の投信会社と雑誌インベストライフが、全国でセミナーを開いている。その会場で次のようなことを宣うた御仁がいたらしい。「ありがとう投信は、税理士、公認会計士が興した会社でしょう、税金を誤魔化す指導をする悪い人達の投信なんか買いません」。聞いていて馬鹿らしくなるが、こんなレベルの方が多い。

公認会計士は、粉飾決算容疑で日本の四大監査法人の一角が崩れてしまった。米国でも、四大監査法人のひとつアーサーアンダーセンが、粉飾決算容疑で起訴され潰れてしまった。後日、無罪の判決がでたが、この時既に遅し、名門監査法人はこの世から消えてしまった。会計士監査人の選任母体が今のままでは、独立性が担保されず悲劇は繰り返されるだろう。

さて、次は税理士。マルサの女や、テレビドラマの扱いからして、税理士を見下す者がいても無理もない。先般も某落語家が、襲名披露のご祝儀を脱税した事件で、税理士にお願いしたと言い訳をしていた。この手の責任転嫁は数限りない。欠席者の祝儀袋が地下室に置いてあったそうだが、税理士に家捜しする権限はない。この事案では質問して糺すのが精一杯だろう。

企業経営者なら馬鹿馬鹿しいと一笑に付す事案も、税理士と付き合いの無い者は真剣に税理士が悪いと思ってしまう。私にも、こんな経験がある。中学の同窓会にでた時のこと。「税理士か、悪いことばかりやってると今に天罰が下るぞ」と妙に突っかかってくる輩がいた。不愉快極まりないが、せっかくの雰囲気を壊すのも大人げない。無視することにした。

後日、情報が入った。彼は相続税の申告を某税理士に依頼した。納税額が大きくなり税理士に誤魔化しを懇願した。しかし、税理士は脱税の手助けはできないと取り合わなかった。その怒りが私に向いたとのこと。更に後日談。彼は相続税の調査を受け、隠し預金が見つかった。当然、調査官に税理士が勝手にやったと言い訳した。調査官もプロ、そんなことは真に受けない。

彼のいい分通りなら、税理士は脱税幇助どころか単独犯、逮捕、懲役、しかも職を失う。しかし、大罪を犯す理由が見つからない。結局、彼は税理士にも見捨てられ、税務署にキツーイお灸を据えられた。常識的に考えれば解る。反国家的集団に、申告納税の代理、しかも無償独占権を与えるわけがない。我々の使命は、適正な納税義務の実現を使命としているのである。

私の知る限り、医師と税理士以外の職業法は有償独占である。報酬を戴いた仕事に限り責任を負う、これが通常の職業法である。無償独占は報酬の有無に関係なく責任を負うというもの。医師は生命を、税理士は租税を対象とするのでやむを得ないのだろう。これだけ厳格な職業法がありながら、安易に脱税指導や脱税幇助をするなど考えられないのである。

だが、7万人もいると中には、お金に目がくらんだり、何らかの欲望に負けて罪を犯す者がいるのも事実。その僅かな脱落者を見て、税理士全員が悪者だと言い切るのは短絡的である。税理士法には、助言義務(税理士法第41条の3)の規定がある。納税者の不正を発見したら、是正するよう助言しなければならない。見て見ぬふりをしたら、懲戒処分が待っている。

この条文のために、私はどれほど多くの依頼者をお断りしたことか。社会的地位、資格、財産及び名声と品性とは、全く結びつかないから不思議だ。

 

※この文章は上野会計事務所さんが発行している冊子から転載させていただいております。

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