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ありがとうコラム

格差社会

格差という言葉が花盛り。統一地方選でも「格差社会の是正」というスローガンが目に付いた。私は、この言葉が言語明瞭、意味不明で大嫌いである。伝統的に我々は、社会の階層を上流、中流、下流に分けて考えていた。しかも、その人の倫理観、教養、立ち居振る舞い、生き様等々、品位を尺度として分類するのであって、財力をひけらかすのはタブーであった。

今騒いでいる格差社会という言葉は、財力を尺度に議論している。有産階級と無産階級というマルクスさんの階級闘争を彷彿させる。品位を重視した従来の概念が、何処かに吹っ飛んでしまった。確かに下流階級と無産階級は共通点が多いのも事実、「衣食足りて礼節を知る」ともいう。しかし、「腐っても鯛」というから、品位が財力に負けるとは思えない。

上流階級は、有産階級のうち働いて糧を得る必要のない人々をいう。ひたすら消費するだけである。お金の苦労とは無縁の方々で、精神的にもゆとりがあるから、社会奉仕活動に情熱を燃やす。その行動はスマートで上品である。「あの人は通りが違う」と尊敬の念さえ抱かせる。似て非なるものが、似非上流、品位に欠け「成り上がり」といって人は馬鹿にする。

結局、日本人のほとんどは中流階級である。働くのが当たり前で、そこそこの財産を持ち、それなりの見識を持つ。中流を品位という尺度で、中の上、中の中、中の下と分けてみるのも面白い。財力とは無縁の分類ゆえに、自分の評価と他人の評価は恐らく違ったものになるだろう。財力と切り離せば格差(言外に政治が悪いといっている)という言葉の入り込む余地はない。

だが、財力の尺度を持ち込むと、稼ぎと蓄財の優劣によって中流の3類型にぴたっと当てはまる。恐らく政治家のいう格差社会とは、財力格差のことだろう。私は品位の尺度では中の上を目指し、財力の尺度では中の下だと思っている。稼ぎもそこそこあるが、出費もそれに正比例するから蓄財の歩留まりは僅か、そう、お金は「お足」、殊更左様に逃げ足が早い。

品位と財力を同じ土俵で語るのは愚かである。財力格差を声高に叫びすぎるのは如何なものか。人には個体差があり、その人間の生き様はそれこそ千差万別、価値観も各々異なる。財力が無くても心ゆたかに生きている人は数限りない。他方、物欲に魅せられて道を誤る人もいる。世界的視野に立脚して日本を見れば、財力格差社会だと言ったところで、誰が信用するだろう。

懸念を払拭する必要がある。農耕民族の我々には元々助け合いの精神があった。その社会的財産を復活させることが対策のひとつ。公教育の復権、即ち誰れもが機会均等に高度の公教育を受けられれば、財力格差は本人の努力次第で逆転可能、これも対策のひとつ。このような社会的環境の基盤整備が急務であって、政争の具にして悪戯に国民を煽り立ててはいけない。

格差社会、嫌な言葉である。私は平等より公平を選択したい。

 

※この文章は上野会計事務所さんが発行している冊子から転載させていただいております。

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