資産運用と職業倫理

職業倫理要綱
私は現在日本CFA協会の事務局長をしております。この協会は1962年に米国に設立され、以来証券アナリストの資格を世界的に普及させることに意欲的に取り組んできております。
現在では世界で67,000人の資格保有者を擁しています。CFA(Chartered Financial Analyst)の称号は第3次試験まで合格したものに授与されますが、授与の条件として、CFA協会が提唱している、証券アナリストとしての職業倫理規範を遵守するという誓約書に署名することが必要です。また毎年協会のメンバーシップの更新時にも、この署名を必ず行うことになっています。
1962年以来毎年CFAの試験が実施されていますが、1次から3次試験までかならず職業倫理の問題が出題され、この分野はきわめて重要な地位を占めています。資産運用関係業務に携わる者は、運用のスキルだけでなく、スキルを支えるきわめて高い職業倫理感を持つべきであるというのが協会の設立理念になっています。運用スキルと職業倫理は表裏一体となっているもので、高い倫理感があって初めて、優れた投資運用が実現できるということになります。
CFA協会の職業倫理要綱の主な点は以下のようになっています。
- 投資行動を管轄する政府、監督機関などの定める、法律、規制などをよく理解し、遵守しなくてはなりません。投資の専門家として、自主性、客観性を保ち、充分な注意を払い、合理的判断を行うこと。専門家として、誠実性をこころがけ、不正、詐欺などの行為は行ってはなりません。
- 資本市場の健全な発展に寄与する。インサイダー情報に基づいて行動してはいけません。また市場価格を人為的に操作する行為は行ってはなりません。
- 顧客の利益を最優先し、思慮深い配慮を保ち、公平に顧客に対応する。
- 投資推奨、運用が顧客のニーズに適合することを確認すること。
- 雇用主の機密情報を漏洩したり、誹謗するなど、信用失墜や損害を与えてはなりません。また雇用主、監督者などが違法行為を行わないように、努力する。
- 投資判断は的確な調査に基づき、合理的な根拠を前提として自主性をもって行う。
- 自己の客観性、顧客、雇用主に対する忠実義務に対して、自主性を損なうおそれのある利益相反関係は公正に開示する。*CFA協会の評判を損なうような行為は行ってはなりません。
以上が守るべき倫理規範ですが、昨今の世界的な金融、証券の不祥事は関係者が全てこの倫理感を身につけておれば、大半は防止できたと思われます。最近のライブドアの問題などにより、証取法の罰則規定強化などが話題になっていますが、それ以前の問題として、投資関係者のモラル、倫理感の浸透をはかることが最優先課題と思われます。その意味でもCFA協会の倫理規範は幅広く普及してほしいと願っています。


